2017年6月16日2021年5月3日 16 ドイツ研修記6:ヴォルフさん訪問 いよいよいつものザーレムでの研修が始まりました。 ライアと取り組む毎日です。 今回の研修は主にライアの塗装です。 その間に、念願だったヴォルフさんを訪問しました。 ヴォルフとはドイツ語で オオカミという意味なので、 日本語に訳すと狼さんという名前です。 日本人の苗字としてはかなり珍しいように思います。 熊さんはいそうですが・・・長屋とかに。 ファーストネームを合わせると レオ・ボルフというとても短くてかっこいい名前です。 ゲルトナー工房でのニーダーさんの先輩で、 ゲルトナーライア工房をけん引されていた方です。 ニーダーさんからの話と その勇ましい名前から、 がっしりとして背が高く勇ましい姿を想像していました。 ニーダーさんのお宅から 車で1時間ほど走ったところに ヴォルフさんは一人で住んでおられました。 ニーダーさんにとっても10年ぶりぐらいの再会だそうです。 呼び鈴を押して出てこられたのは、 どちらかというと小柄な、 でもしっかりとして優しそうなおじさんでした。 年を聞くと80歳だそうで、 とてもそんな風には見えません。 さっそく、持ってきた修理用のチェンバロを 車から取り出すと、ヴォルフさんに見てもらうことにしました。 もともと、チェンバロの方が専門で、 今はライアは作らず、 時々チェンバロを制作されているそうです。 あちこちをチェックしながら、 問題の個所を探し当てていく動きはさすが職人です。 修理が完了した後、 いよいよ下の工房を案内していただきました。 規模はニーダー氏の工房ほどではありませんが、 道具はしっかりそろっています。 手前には作りかけの子ども用の椅子が たくさん置いていありました。 曾孫さんたちのために、作っているとのことでした。 おじいちゃんが作ってくれた椅子に座れるなんて、 なんて幸せなんでしょう。 それも、メープルの美しい木で作られています。 作業台の上には作りかけのベッドの材料が置かれていました。 「ベ、ベ、ベッド!!」 私のトラウマがよみがえってきました。 私の娘は、ことあるごとに言います。 「小さいころ、パパがベッドを1秒で作ってくれる、 という言葉を信じて手伝いをしていた。」 「パパは1秒でベッドを作れるって言ってた。」 「信じてたのに!!」 私は言ったことさえ記憶にありません。 上の部屋に戻り、 今度はご自身が作られた チェンバロを演奏していただきました。 そのあと台所でお水をいただきながら、 ヴォルフさんのお話が始まりました。 今はチェコになっているところで生まれたこと。 何日間かかけて、 4ヘクタールの草原の草刈りをしていたこと。 第二次世界大戦後に家や土地を奪われ、 着の身着のままで逃げなければならなかったこと。 チェンバロの作業場で働いていたこと。 ゲルトナーの工房に入ったことなど、 ヴォルフさんのこれまでの道のりを語ってくれました。 「何年か前にみんなで訪ねて行ったんだ。」 と言って、うれしそうに故郷の写真を見せてくれました。 国は変わっても、やはり、故郷は特別なところです。