ゴールデンウィークも過ぎていきました。
皆さん、楽しく過ごされたでしょうか?
私はただひたすら、
ライアの修理と家の整理に追われていました。
1時間整理は何とか続けていますが、
まだまだ、焼け石に水の状態が続いています。
先を見ずに、淡々と続けていきたいと思います。
フォッサマグナの旅も少し時間がたってしまいました。
思い出しながら書いています。
ホタルイカのてんぷらを食べた次の朝、
ホテルの朝食会場にいきました。
そこには、丁寧に作られた料理が並んでいます。
サービスをされているお年を召されたご婦人に
「丁寧な朝食ですね。」
というと、
「主人が作っています。」
との返事です。
そのあとで、細身の年配の男性が出てこられました。
食事の後、受付のところにその方がおられたので、
そのことを伝えると、
「他からの物を入れるには規模が小さいので、
自分で作るしかないのです。」
との答え。
「昨日受付におられた方は息子さんですか?」
と訊くと、
「そうです。」
との答えです。
このホテルは家族経営のようです。
それから、いろんな話が続きます。
昔は木造の一軒家だったこと。
(写真が飾ってありました)
薬剤散布のヘリコプターの操縦士達が大勢泊まられたこと。
その当時は、戦時中の戦闘機のパイロットだった人たちばかりで
威勢が良かったこと。
日本航空の前身はヘリコプターの会社だったこと。
(時々日航機に着いている不思議なマークは
ヘリコプターの羽が回転している様子だそうです)
チェーン店がやってきたことで、駅前の店が衰退していったこと。
お話を聞いているだけで、豊科という町の
移り変わりが目に浮かんでくるようでした。
ホテルをお暇し、
豊科の駅からは9時42分発の列車に乗り込みます。
この列車を逃したら、
夕方に金沢に着くことはできません。
3両のワンマン列車の先頭車両に乗り込むと、
一番前に陣取ります。
後ろを振り返ると、外国の人たちの家族の後ろに、
昨日大月から松本まで乗っておられたご婦人が乗られているではありませんか?!
あとで挨拶をして話を聞くと、
その方も私のことに気づかれていていたようで、
「一度時間が出来たら東京から鈍行で糸魚川まで行きたかった。」
とのことでした。
鉄道マニア(?)はなにも、
男の子たちだけでもないようです。

信濃大町でたくさんの方が降りられ、
列車の中はガラガラになります。
20分ほどの停車時間があったので、降りて駅の探索です。
ホームから眺めると、いよいよ雪山が迫ってきています。
山の写真が掲載された大きな看板があったので、
背後の山と見比べてみます。


改札を抜け、駅の隣の観光案内所でパンフレットをもらいます。
列車に乗り込み、早速地図を開いてみます。
良く名前を聞く北アルプスの山々が載っています。
あこがれの山たちです。
列車は山間に入って行き、高い山が見えなくなりました。
その代わり、湖と林が続きます。
辺りは、やっと始まった春を満喫しているかのようです。
林の中に時々見える山桜の横を列車はゆっくりと走ります。
心の中が山桜の色合いで洗われていきます。
湖のほとりにも桜が咲いています。
ほとんど人はいません。
桃源郷、ならぬ桜源郷(おうげんきょう)です。


列車が林を抜けているときに、
ハクビシンのような動物が2匹線路の横にいます。
カモシカカモ!!
生まれて初めて見る天然記念物に大感動です。
後でいろんな人に話を聞くと、ふつうに見られるそうです。
「先に聞いてなくてよかった!」
白馬駅に到着です。
とても美しい駅名です。
ここで40分ほど停車。
またホームに降りてみます。
運転手さんもホームで休息しています。
運転中ではないので話しかけてみます。
「さっきのカモシカ見ました?」
「見ました。親子連れだったですね。」
「よく見かけます。」
「えっ?そうなんだ!」
「美しい景色の中、運転できて最高ですね。」
「皆さん、よくそう言われるんですけど、景色観てないです。」
「えっ?そうなんだ、勿体ない!」
「こんな素晴らしい景色を見てないなんて。」
「お客様、ずっと立たれていたので大丈夫かな?って心配していました。」
私の姿は見てくれていたようです。
「スキーとかばっちりでしょうね?」
「諏訪の方なんでスキーは得意ではありません。スケートは得意です。」
「この線は冬はスキーをされる外国の方がたくさん乗られるので、
臨時列車が出るほどです。」
「この後の特急に乗ってこられた方がこの列車に乗り継ぎされます。」
「荷物も多いので冬はここで満杯になります。」
この40分の待ちは行き違いではなく、後から来る特急を待っているようです。
「以前は小谷(おたり)まで特急が走ってたのですが…」
「どうして特急は糸魚川まで走らないのですか?」
「こちらはJR 東海で電化されているのですが、小谷から先はJR西日本で電化されていないのです。」
「なるほど!」
「今の時期は乗客が一番少ないときです。」
「こんなに素晴らしい季節なのに?」
「まだ、一般に知られていないからかもしれません。」
「湖の桜のある樹だけに人が集まっています。」
「なんでも、インスタで投稿された湖と桜の樹の写真がバズったみたいで、
この時期その樹を撮りにたくさんの人がやってきます。」
「後は静かです。」
インスタ、恐るべし!
「九州から来ているのですが、ここらはあこがれの場所です。」
「私なんかは、阿蘇などの九州のあの広大な風景にあこがれます。」
「車が好きなので、よく九州まで行きます。」
さすが、運転手さんです。
「呼子へは何度かイカを食べに行きました。」
「並んでて、大変なんですけど。」
「えっ、それは奇遇ですね。」
「私は呼子に住んでいました。」
「呼子の先の加部島というところにもイカを食べさせるところがあって、
それほど混んでいないし眺めは最高です。」
「九重の瀬ノ本高原もいいです。」
そうこうしている内に10分前となり、楽しいお話は終わり、
運転手さんは運転席に、私はドアのところに戻ります。
特急列車が到着です。
長―い!
多勢に無勢です。
特急から満杯の人が降りてきたら、
この白馬でかなり降りたとしても、
3両の普通はひとたまりもありません。

幸い、乗り込んでこられる方は少なく、
のんびりと小谷まで列車は走りました。
小谷からは乗り換えです。
運転手さんと別れ、ディーゼルカーに乗ります。

あたりは次第に温かさを増してきます。
桜も終わっています。
途中、アンケートを取る人たちが乗り込んできます。
ひざまずいて、
「アンケートをお願いしてもいいですか?」
と言われたので、承知して、
「ひざまずかれるのは苦手なので、隣に座ってください。」
とお願いして、アンケートに答えます。
多分、大糸線の乗客数が少ないので増やす対策を取るためだと思われます。
「九州から来て、八王子辺りから鈍行を乗り継ぎました!」
「ながめがすばらしくて!」
と話をしました。
糸魚川の駅に着いてから、
「不可能だとは思いますが、
列車をフリーWi-Fiにして、
電源のコンセントをたくさんつけて、
移動式コワーキングスペースにしたら、
私のような人たちが増えるかも。」
と提言しました。
糸魚川に着いて、締めでフォッサマグナミュージアムに寄りました。

勘違いから結局、普通に乗り遅れ、
(詳細は恥ずかしくて言えません)
新幹線で金沢まで行くことになりました。
いつか海から切り立った高い山の夢を見たことがあり、
富山の風景かとずっと思っていましたが、どうも糸魚川のようです。
残念ながら、新幹線からはトンネルばかりで、
その風景を見ることはできませんでした。
秘密は隠されたままです。
いつか再トライするぞ!
2025/05/16 井手芳弘