最近落ち着いてきたのか、
旅行をしたいという気持ちが薄くなってきているような気がします。
バタバタと出かけることが多かったからかもしれません。
いや、多分、日常の引力が働いているからだ、と私は考えています。
日常の仕事や環境に埋没していると、その引力が強すぎて、
引力圏外に出る力が押しとどめられて、出る意欲をなくしてしまいます。
がんばって出てみると、引力圏から解き放たれて、
「こちらにも、素晴らしい世界がある。」
「どうして今までそうしなかったのだろう。」
と思ってしまいます。
私はこれを日常引力と呼んでいます。
時として、外的な力によって引き離されることもあります。

サクラの花が過ぎて、あたりはまぶしいばかりの新緑に包まれています。
ふと、新緑の柔らかさって、なぜ感じるのだろうか、と思いました。
まず、色合いにあるのかもしれません。
新緑は黄緑色をしています。
そして、より光を透かしている感じがします。
そして、どちらかというとシャキッとしているより、
少しうなだれている感じもします。
しおれている感じがしないでもないです。
風になびきやすいのも柔らかさなのかもしれません。
柔らかさに少し芯があると、しなやかさに変わるのでしょうか?

柔らかさにあこがれているのかもしれません。
ついつい、自分の心が固まってしまうからかもしれません。

今年の春はドイツ行きから始まって、
八王子からさらに中央線沿いの
藤野というところにあるシュタイナー学園での授業と
バタバタとしています。

藤野は桜が終わり、
まぶしいばかりの新緑と鮮やかな藤の花に包まれています。
この季節にここを訪れるのは2回目です。

東京の高田馬場で始まった最初のシュタイナー学校は
年月を経て、藤野の地で引き継がれています。
学校づくりには参加できませんでしたが、
こうして年に2週間ほど関われているのは嬉しいことです。

ドイツでたくさんの先生方に教えていただいたことを、
恩返しとして少しでも渡していければと思っているからです。

「でも、もうそろそろいい感じかな?
がんばってきたし…」
とも思っています。

毎回、授業に行ったときは疲労困憊して
その日のうちに飛行機で福岡に戻っていたのですが、
今回は金沢に用事があり、
引き続き向かうことにしました。

初めのうちは、飛行機でとも考えたのですが、
藤野から八王子を経て羽田まで戻るのも大変だし、
そのまま中央線を列車で突っ切っていくことにしました。

列車の時間を調べると、
特急を使っても、鈍行を使っても着く時間は変わらないので、
普通で行くことにしました。

大月という駅で乗り換えると、次の列車は松本まで走ります。

大月から山の中を走って、
途中長い下り坂のトンネルを抜けると、
視界が広がり甲府盆地が見え始めます。
あたりはいたるところブドウ畑です。

九州ではこれくらいの斜面であれば棚田になっていますが、
こちらはすべて畑です。
甲府の近くまで下りてきて平らになっても畑です。
お家が畑に取り囲まれている風景は不思議です。
梅雨の季節になっても、
多分、カエルの鳴き声はしてこないのだろう、と想像します。

子どもの頃に扇状地について学びました。
水はけがよすぎて、田んぼは作れないのだろうと思います。

甲府から先の中央線からの眺めは雄大です。
右には八が岳、左には南アルプス、
背後には富士山が見えます。
そう、この雄大な景色はフォッサマグナという地殻の変動でできたもので、
富士川、甲府、松本、白馬を貫いて糸魚川まで続いています。
この、フォッサマグナのラインに沿って線路が走っています。
いわゆる、フォッサマグナの旅です。

列車には下校の高校生などが入れ替わり立ち代わり、乗っては降りていきます。
そんな中、一人の年配のご婦人がずっと大月から乗り続けられています。
松本あたりに用事があるのでしょうか?

四時間弱乗り続け、松本駅に着くと、大糸線に乗り換えます。
いきなり、2両の列車にぎゅうぎゅう詰めです。
ドア付近に立っている男の子はスマホを眺めていますが、
列車が止まるとドア開閉のボタンを押してくれます。
混んでいると、降りる人がボタンを押せないからです。
ちなみに、ドアはボタンを押さないと開きません。
助け合いで成り立っていて、ほほえましい感じです。

先には雪山が連なっています。
テンション上がりまくりです。
豊科という駅で降りて紫山荘というホテルに向かいます。
どっちみち、その日のうちには金沢にはつかないし、
暗くなって、景色が見えない中で走るのは残念だからです。
信濃大町は街のような気がするので、静かなところを選びました。

あたりは3000m級の雪山に囲まれています。
スイスアルプスを訪れた記憶がよみがえります。
ホテルに着いて窓を開けると、やはり雪山です。
最高です。

近くにイオンが見えたので、夕食の買い出しに行きます。
お墓の中の近道を通って行くとすぐです。
ついでに、あたりを散歩します。
大きな通りに出ると、よく知ったチェーン店が並んでいます。
違うところは遠くに雪山が見えることです。

結局お店には寄らず、
イオンでホタルイカの唐揚げとホタルイカの炊き込みご飯を買いました。
ホタルイカは5㎝ほどの小さなイカで、富山湾の名産です。

真っ暗になったお墓の間を通ってホテルに帰るときに、
「こんなに暗かったら向こうから来ている人見えないよね。」
と思った瞬間、人に当たりそうになりました。
ホテルに戻って、早速ホタルイカを賞味します。

また、続きが書けるぞ!!

2025/05/02 井手芳弘

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