響きって何でしょうね?
星空を眺めたとき、
そこから降り注ぐ響きを感じることがあります。
今は木星がふたご座のお腹の中で明るく輝き、
星空の響きに色を添えています。
辺りの風景を見渡した時にも、
そこに響いているものを感じることがあります。
日向ぼっこのやりすぎかもしれませんが…

楽器作りに携わるようになって、
より響きについて考えるようになっているこの頃です。
楽器は、作ってみると、よりその本質が分かります。、
最近、楽器が響いているイメージが少しわかるようになっている気がします。
単なる思い込みでしょうか?
バイオリンの話をニーダー氏はよくします。
良いバイオリンとは、低音から高音まで均質に響く楽器のようです。
まるで人間のようですが…
最初にバイオリンの形を作ったアマティは
いろんな試行錯誤を経てあの楽器に行き当たったのではなく、
ビジョンとし完成された楽器の形が降りて来たそうです。
それからは、その形をいかに真似ていくか、が現代まで続いているそうです。
もちろん、楽器の響きの好みは個人差があるので、
どれがいい響きか、というのは何とも言えないところがあります。
あくまで私の個人的な見解として受け取ってほしいと思います。
昔は、すべて自然界の物で楽器を作っていました。
太鼓は動物の皮を張り、
笛は竹や木で作り、
バイオリンやハープなどの弦楽器は木とガット(羊の腸の皮)
から作られていました。
不思議なことに、使われている素材や構造によって、
その響きが私たちの違う部分に働きかけます。
太鼓は、お腹に響いてきますし、
笛や弦楽器は胸に響いてくる気がします。
ライアは、というと金属弦が張られているので,
より頭に近い所に響いてくるように感じます。
光のようです。
私はザーレムライアの響きが大好きです。
入荷すると、音をチェックするのが楽しみです。
なんというか、弦の響きが板に伝わり、ライアの内側から音がにじみ出てくる、とでも言いましょうか…
それでいて繊細な絹のようなきらびやかさがあります。
弾いていてなんとも心地よい気持ちにさせられます。

何でそうなのか、あるときわかりました。
音が木からしみだしてくるイメージは、
弾いている人の身体、心が響いているイメージにつながるということを。
自分の心が響くから心地良いのだと思います。
その響きの秘密は、ニーダー氏のところで研修を積む中で、
少しずつ明らかになってきました。
ニーダー氏は初代ゲルトナー氏が生み出したライアを、
演奏者たちからフィードバックをもらいながら、
改良していきました。
まず、これまであったライアの表面の共鳴板をトウヒ(スプールス)から菩提樹に替えました。
バイオリンもチェロもギターもほとんどがトウヒを表板に使っています。
ゲルトナーライアも当然トウヒが使われていました。
それを、菩提樹に変えることでザーレムライア特融の柔らかみのある響き生まれました。

フレームや底板もこれまでカエデ一辺倒だったものを、
サクラ、トネリコ、ニレなどの材料を使うことで、
それぞれの木が持つ個性のある響きを生み出しました。
使う木も倉庫で長年寝かせた材料を使っています。
ペロルライアも、もちろんニーダー氏から分けてもらう最高級の材料を使います。
ありがたいことです。

そのほかにも、大切に保管されてきた国産材のケヤキやヤマザクラなどとも出会うことができ、
この材料から生まれるライアも楽しみです。
ザーレムライアは見た目はゲルトナーライアとあまり変わりませんが、
内部の構造は試行錯誤の末、かなり変えられています。
ここにもニーダー氏の努力が垣間見られます。
<こういう響きを生み出したい!>
という明確な方向性に向かって進まれています。
そう、忘れてならないのは使われている弦です。
最初、弦を自作していると聞いて、大変驚いたことを覚えています。
今では、私自身も弦を作れるように成長しました!
パチパチパチ!!

市販の弦では実現不可能な、細い芯線に2度ほど弦を巻く技術には驚嘆します。
そのおかげで、ふくよかな響きが生まれています。
太く巻かれた低音弦でも、ブリッジやフレットには細い線だけが触れるように加工されています。
ライアの繊細な響きはこのことからも生まれています。
塗装工程にも、響きの秘密があります。
使用するのは自然由来のニスです。
合成塗料を使えば作業は早く済みますが、
木の呼吸を止めてしまい、音の響きに影響します。

塗装の工程は、何度も繰り返されます。
塗る。
乾かす。
磨く。
また塗る。
また乾かす。
また磨く。
この作業を6度ほど繰り返します。
一台のライアを仕上げるのに、
塗装だけで数週間かかることがあります。
こうして作られたライアは、
一台一台が個性を持ちます。
使う木材が違えば、
木目の表情が違います。
同じカエデでも、
育った場所や樹の年数などによって、
微妙に音色が変わります。

ニーダー氏はよく言います。
「ライアは作る人の気持ちが音に出る。」
「だから、気持ちが乗らない時は、
他の作業をするんだ。」と。
見習おうと思います。

なんだか、ザーレムライアの響きが
どういうところから生まれるか、
を書いてしまいました。
ペロルライアはこれらの技術的なこと、
精神性をしっかりと受け継ぎ、
一台一台、魂を込めて作っていきたいと思います。

自宅の工房で黙々と作業をしていると、
ザーレムの工房でニーダー氏と一緒に作業をしていた日々が思い出されます。
ザーレムでは、窓の外に広い草原が見え、
散歩に出かけると遠くにアルプスの山々を望むことができます。
とても心地よく作業ができました。
自宅ではただひたすら作業ですが、
あの日々の記憶を励みに頑張りたいと思います。

次回は、「22年の旅路」です。
ニーダー氏との出会いから今日にいたるまでの、
22年にわたる交流について書いてみようと思います。
2026/02/06 井手芳弘
