話は前回で完結させようと思ったのですが、
「上海空港編、期待しています。」
とのお言葉もあったので、
恥を忍んで書いてみたいと思います。
ただ、前回でも結構大変で、「読み継がれるのに疲れた。」とのお言葉もあり、
皆さんの反応も少し心配ですが…

帰りの飛行機は結構混んでいて、隣の席も詰まっていたので、
残念ながら横になって過ごすことはできませんでした。
最初の頃はヒヤヒヤ、ドキドキしたロシア上空ですが、
慣れというものは恐ろしいもので、いつの間にか全く気にならなくなっていました。
10時間半ほどで上海に着きました。さすがロシア上空直通です。
到着してすぐに係の人に、
「乗り継ぎができなかったので、1泊無料でホテルを紹介していただけると言われました。」
「どこに行ったらいいでしょうか?」
と訊きました。
ところが、私のチケットを見た係の人は、
「これは明日のチケットだから駄目です。」と言うばかりで、
こちらの意図をなかなか読み取ってくれません。
何とか頑張って説明すると、とにかく「あちらに行きなさい」とのこと。
言われた方向へ行ってみました。
それは、たらい回しの始まりでした。
そこにいる係りの人に尋ねると、
「ターミナル1に行きなさい」
と言われ、
ターミナル1へ向かいます。
ターミナル1に行くと、
今度は
「一旦外に出なさい。そして1階から3階に上がって、そこで訊きなさい。」
とのこと。
3階に行ってインフォメーションに行くと、結構な人が並んでいます。
たまたま、そばを通りかかったチャイナイースタンの係の方に、
「どこでホテルを紹介してもらえるのでしょうか?」
と尋ねました。
すると、
「1階に降りなさい。そこで11番カウンターを探しなさい」
とのことです。
長い時間待って、やっと入国審査場を抜け、荷物のピックアップ場にやってきました。
ひょっとして私の荷物がここで出されていないかと少し不安になり、
自分の飛行機の荷物置き場に向かおうとしましたが、
どこにも乗ってきた飛行機の便名が書いてありません。
もう時間が経ちすぎたので、荷物はすでに取り外されているのでしょう。
まあいいかと思い、ホテル探しに向かいます。
荷物のピックアップ場所から外に出て、11番カウンターを探します。
しかし、どこにもありません。
仕方なく相談所に行って訊いてみると、
「向こうの遺失物取扱所で訊きなさい」
とのこと。
また、たらい回しにされる予感がしてきました。
「なんで遺失物取扱所なんだろう?」
と不思議に思いながら、遺失物取扱所の方に訊いてみると、
「先ほどの場所に行きなさい」と言われます。
思った通りです。
どうも、ぐるぐる循環しているようです。
「さっきの場所に行ったら、ここに来いと言われたんです」
と言うと、その方もかなり困惑した顔をしています。
二人で困惑しながら、その方のスマホの翻訳ソフトを使いながらやり取りします。
私の英語を中国語に、中国語を英語に訳しています。
もちろん、私の英語はかなり初心者です。
翻訳ソフトで通じるのが不思議です。
何度かやり取りをした後、
「ホテルを探しているんですか?」
と訊かれました。
「最初からそう言っているんだけど……」
と思いながら
「はい、そうです」
と答えます。
すると、横のところから受付をして中に入りなさいと言われます。
なんだか秘密の場所への入り口のようです。
そこは、先ほどから人がうろうろしていた場所です。
パスポートを見せて中に入ってみると、
なんと、さきほどまで居た荷物引き取りの場所ではありませんか。
しかし、よく見ると、そこに「Transfer Service」と書いてあります。
これは、かなり期待が持てます。
そこにはたくさんの人が並んでいます。
そこでもかなり長い時間待ち、やっと自分の番になりました。
「ホテルサービスをお願いします」
と言うと、
係の人は隣を指差して、
「ホテルは隣のカウンターです」
と言うではありませんか。
隣のカウンターには誰も並んでいません。
「長い時間を待つ必要はなかったのでは……」
と思いましたが、仕方ありません。
受付を簡単に終わり、
椅子に座ってしばらく待っていると、
チャイナイースタンの係の人がやってきて、
「ホテルへ行く人ついてきて!」
と呼びかけます。
その人の先導で、
10人ほどがそろそろと歩いていきます。
まるで団体旅行のようです。
どこからともなく、
「どこにいったらええの?」
「さっぱりわからんわ。」
「どないしたらええんやろ?」
と関西弁の大きな声が響いてきます。
でも、立ち止まるわけにはいきません。
立ち止まると置いていかれます。
泣く泣く見捨てていきます。
空港の外に出ると、
行き先に「VIP」と書かれたバスが数台止まっていました。
「VIPなんだー!」
と思いながら、言われるがままに、そのうちの1台に乗り込みます。
しばらくすると、バスは発車しました。
数年前の上海での一泊を思い出しました。
その時は「シャトルバスが来る」と言われて、
超小型のおんぼろのキャラバンのような車が来ました。
それに比べると、今回はちゃんとしたバスです。
乗り口のすぐそばの席に座っていると、
隣の中国人の男性が中国語で話しかけてきます。
私は、
「残念ながら日本人で、中国語は分かりません」
と答えると、
前の座席の女性が振り向いて、
「私も日本人です」
と答えます。
中国人とのハーフで、中国の大学へ留学しているとのこと。
もちろん、中国語はペラペラで、隣の男性と中国語で話しています。
その女性が私に、
「トランジットサービスのところへ行ったら、
『代わりの航空券はまだ後で取っていいから』
と言われて、ホテルだけ紹介されたんです。」
「不安なんですけど……」と言います。
中国の人でさえ、この状況が不安で、
どうしていいのか分からない状態なんだと知り、
驚きと、ちょっとした安心感が生まれます。
やがて立派なホテルに到着しました。
フロントには、バスに乗っていた乗客が次々と並びます。
私は最初に降りたので、気が付くと一番前に立っています。
すぐに部屋に入れる、と思いきや、一向に手続きが進みません。
航空会社の職員が2人いましたが、一人の人がもう一人の人に一生懸命説明しています。
それからホテルの人にも、またいろいろ説明しています。
どうも、きちんとしたマニュアルはなさそうです。
受付の方が混乱していて、乗客は置き去りにされています。
しばらくして、集まった人たちに、
「QRコードは取りましたか?」
と話しかけています。
ちょうどQRコードを表示していた私のスマホを取り出し、
高く掲げながら、
「これです。これを皆さん取得してもらっていないと困ります。持っていますか?」
と問いかけて回っています。
結構多くの人が持っていないようです。

いろいろな人のところを回った挙げ句、
「このスマホ、誰のだっけ?」
と言っています。
私は慌てて、そのスマホを取り返します。
そんなこんなの大混乱の中、
わたしは何とか最初に手続きを済ませることができました。
隣にいた西洋人の家族を見ると、
ご主人がかなり厳しい表情で、ホテルの人とやり取りをしています。
「結構、大変ですね」
と話しかけましたが、全く聞く耳を持ちません。
何とか手続きを終えて、最初に部屋の鍵をもらいました。
それから、
「明日は何時に出発でしょうか?」
と訊きます。
しかし、またたらい回しにされて、答えは返ってきません。
「後で、後で」
という返事しかありません。
仕方がないので、終わった頃にまた来ようと思い、
部屋へ上がりました。

部屋に到着してみると、
それはそれは素晴らしい部屋です。
ベッドはキングサイズ。
しかも角部屋なので、窓は2方向が上から下まで全部ガラス張りです。
そこからは上海の街の風景が見えています。
こんなことがない限り、なかなか泊まることのできないようなホテルです。
「ラッキー!」

シャワーを浴びた後、下に降りて夕食の麺をいただきます。
私たちのために、一人、麺作り担当の方が頑張っています。
レストランの端の方では先ほどの家族連れがワインを片手にくつろいでいます。
ロビーの方では、相変わらず人だかりです。
お腹を膨らませて部屋に戻り、しばらくくつろいだ後、
12時頃にロビーに降りてみました。
な、なんと、まだ7~8人残っているではありませんか。
皆さん、さすがにどんよりとしています。
「明日の朝のバスは何時でしょうか?」
「明日の朝9時の飛行機で福岡に行かなければならないのですが。」
と係の人に伝えると、
そばにいた白人の男性が
「僕も福岡行きますよ~」
と日本語で答えます。
もう一人の男性も日本語で
「僕も福岡に行くよ~」
と答えます。
2人ともイギリスから来た人たちのようですが、
一緒に来たわけではないようです。
驚いたことに、2人は何時間も待たされているのに、全然カリカリしていません。
「イライラしても一緒だからね~」
という感じで、どこかほんわかしています。
そのファニーな感じが、何とも言えません。
初めて出会うタイプのイギリス人です。
一人はバイオリンを携えています。
よく話を聞いてみると、なんと同じ唐津に滞在しているとのこと。
その奇遇さに驚きです。
次の日の朝のシャトルバスは6時に出る、とのことを聞き、
イギリス人たちと別れて部屋に戻りました。
そして、キングサイズのベッドの端っこで、ぐっすりと眠りました。

次の日の朝は、何の問題もなく空港に着きました。
イギリス人の彼とも一緒になり、飛行機に乗り込みました。
そして、福岡空港に無事到着!
スーツケースと巨大な荷物を抱えながら、
国内線へのシャトルバスに乗り、
そこから高速バスで帰ることにしました。
数時間の待ち時間がありましたが、
地下鉄への階段を上り下りし、列車に乗ることを思えば、
荷物入れの中に荷物を詰めて、家の近くまで走ってもらうのは最高です。
巨大な荷物はバスの荷物入れにギリギリで押し込み、
取り出す時にかなり破れてしまいましたが、
それでも中身は問題なく、無事に家に到着することができました。
「バンザーイ!」
先がわからないというのは、本当に不安なことです。
でも、振り返ってみると、今回の上海での一泊は、
思いがけず豪華なホテルに泊まることができたり、
同じ唐津に滞在しているイギリス人と出会ったりと、
結構楽しい思い出になりました。
なによりも、自分が原因じゃないって気が楽でいいよね!
2026/9/4 井手芳弘
