皆さんは、小人さんの存在を信じますか?
もちろん、そんなものがいるなんて信じませんよね。
私も、そんな非科学的なことを信じる人間ではありませんでした。
ところが、ある日を境に、小人さんがよく現れるようになりました。
そのきっかけはいくつかあります。

最初に小人さんを意識し始めたのは、ある外国の空港でのことです。
チェックインカウンターの前のフロアーに、男性が何やらたくさんのビニール袋を配っていました。
私は、またこういうものを販売する人がいるのかと思い、無視しました。
ところが、チェックインカウンターでは、
液体物をビニール袋に入れなければならないことになっていたのです。
袋に入れられない液体物を手放すしかありませんでした。
そのとき、私はグリム童話の「命の水」というお話を思い出したのです。

これは、ある国の王様が重い病気になり、
三人の王子様がそれぞれ、
王様のために命の水を汲みに行くというお話です。
一番上の王子様はとても賢く、何でもできました。
馬に乗って進んでいると、石の上に座っていた小人さんに出会います。
「王子様、王子様、どちらへお出かけですか?」
小人さんが尋ねると、
王子様は
「お前のようなちびすけが知ったこっちゃない」と言いました。
すると、小人さんは王子様に呪いをかけました。
王子さまが馬を進めていくと、
前にも後ろにも進めない、
狭い谷の岩の間に挟まれてしまいました。
二番目の王子様も、とても賢い王子様でした。
しかし、同じように小人さんを馬鹿にし、同じ目に遭ってしまいます。
三番目の王子様は、少しのろまで、あまり賢くありませんでしたが、とても優しい王子さまでした。
小人さんが、
「王子様どちらへ?」
と訊くと
「小人さん、こんにちは。」
「実は、私は王様のために命の水を汲みに行こうとしているところなのです。」
「どこにあるか、ご存じですか?」
と答えました。
すると、小人さんは命の水のあるところを教えてくれ、道具も与えてくれました。

私は、自分が空港で、最初の王子様と同じような態度を取ってしまったことに気づき、このお話を肝に銘じ、取るに足らないと思えるような存在に対して、きちんと対応しようと考えるようになりました。
でもこの時は、「昔の話ってなんて英知が含まれているんだ。」ぐらいに考えていて、小人さんの存在自体は信じていませんでした。
ところが、私が訳した『幼稚園の遊びと手仕事』という本に書かれていた内容に出会ってから、考えを変えました。
その本には、フライヤ・ヤフケ先生が、ある子から受けた質問について書かれていました。
幼稚園にあるクリスマスの飾りの中にいる人形が、
毎日少しずつ移動していることについて、
子どもが、先生に尋ねたのです。
「先生、どうして人形さんは毎日動いているの?」
「それはね、クリスマスの妖精さんが動かしているのよ」
ところが、年長のその子は、次の日、真剣な顔をして尋ねました。
「先生、本当にこの小人さんを動かしているのは誰?」
「本当に妖精さんなの?」
その子の真剣なまなざしを見て、先生はこう答えたそうです。
「ここだけの話なんだけれど、この小人さんは私が動かしているの。」
「いいこと? 大人はね、いつだって妖精さんが乗り移ることができるの。」
「このことは、私たちだけの秘密よ」
私は、この話を読んで理解しました。

小人さんは、人間に乗り移ることができるのだ!!
それからです。小人さんが乗り移った人を見ることができるようになったのは。
私が関わっている教室の自然観察会では、それから必ずと言っていいほど小人さんが現れるようになりました。
どこからともなく、ふと現れます。
たいていはある程度の年齢の男性の姿をしています。
あるときなど、その土地の方から
「ここには問題な小人さんがいて話しかけてくるけれど、お話をしないように」
と注意を受けている間に、
その小人さんがほかの参加者たちを集めて話を始めていたこともありました。
私が得てきたさまざまな生きた知識は、小人さんのおかげだと言っても過言ではありません。
野焼きイベントに参加させてもらったこともありますし、
普段は入れない扉を開けてもらったこともあります。
「小人さんありがとう!」
小人さんとお話する際に大事なことは、
小人さんのお話に、興味を持って耳を傾けることです。
最初にその小人さんに適切な質問をすることも大切です。
もちろん、「あなたは小人さんですか?」という質問は禁句です。
正体を見破ったことになってしまいますからね。
これまでの小人さんとの会話の最長記録は二時間ほどです。
諏訪大社でお参りをしている小人さんに、
「どうして、古いほうのお参り場所からお参りしているのですか?」
という質問がきっかけでした。
諏訪大社では、七年ごとに御柱祭が行われます。
その際に新たなお参り場所が作られるので、新旧お参り場所が隣り合っているのです。
それがきっかけとなり、諏訪大社の全貌について、たくさんのことを教えていただきました。

この前、伊勢神宮から10kmほどはなれた、伊勢神宮に絹の織物を織って献上する神社を訪れたときも、小人さんに出会いました。
鳥居をくぐり境内に入ろうとしたとき、田んぼを眺めている小人さんがいました。
私は、その小人さんに、
「この田んぼのお米、もう一度収穫するんですか?」
と質問しました。
それから農業の現状についてひとしきり話をした後、話題は神社のことへと移っていきました。
神社で行われていること、その方自身が関わっていることなどを、事細かに教えていただきました。
そして最後には、神社の機を織る方からも貴重なお話を聞くことができました。
それは、それは、とても印象深い体験でした。
つい最近では、久しぶりに立ち寄った「つるや」といううどん屋さんで、小人さんに出会いました。
お昼の閉店間際に入り、おいしいうどんをいただいた後、

「とてもおいしかったです。」
ところで、「筑後うどんって、どんなうどんですか?」
「ここも筑後うどんに入るのでしょうか?」
小人さんは、筑後うどんについて丁寧に説明してくれたあと、
国産小麦でうどんを作る方法、
これからの店の展望、
など、熱く語ってくれました。
うどんのことだけでなく、
その背景にあるさまざまな事情まで知ることができ、
本当にありがたい時間でした。

先日は、山の小人さんのお宅へ通りもんの捧げものをもってお邪魔しました。
小人さんは親切にも、日本ミツバチの熟成したはちみつ3種類の試食(これまで食べたことのない味わい)、原木栽培のシイタケ、たくさんの春菊、瓦せんべい、唐辛子、梅干しなど、私が捧げ物として持っていったもの以上に、たくさんのものをいただいて帰りました。
興味深い話もたくさん聞かせてもらいました。
思えば、私のこれまでの歩みは、たくさんの小人さんたちの支えによって成り立ってきたように思います。
本当に、感謝の気持ちしかありません。
寝てる間に、部屋を片付けてくれる小人さんも欲しいな…
2026/10/16 井手芳弘
