先日、ライア作りの合間に、我が家の露天風呂の塀を高くする作業をしました。
古い既存の柱の上に、さらに柱を継ぎ足すという作業です。
どのようにすればうまくできるか、
といろいろと考えを巡らせた末に、
作業に取りかかりました。
これまでの経験が生きて、
かなりのところまでは順調に進みます。
しかし、やはり実際にやってみると、
想定を超えることがあり、
失敗の連続です。
頭の中で完璧だと思っていた計画に
盲点があったことに気づかされます。
なんとかその失敗を克服しながら、
少しずつ作り上げていきました。

大工さんに頼めば、もっときれいに仕上がるに違いありません。
実際、あちこちに修正した跡が見られます。
自分でやると、効率も悪く、出来上がりもいまひとつ。
そのうえ、その作業のための道具が増えてしまったりします。
家の改築のときも、床張りや壁塗り、さらには薪ストーブの設置まで、
自分でやってみました。
壁塗りについては、
工務店の人が褒めてくれましたが、
目地の処理が完璧ではなかったため、
目地の跡が浮き出てしまっています。
失敗した箇所を眺めながら、
「まあ、これは作業の記念だよね」
と自分を慰めたりしています。
(実は気になっている…)
自分の中では、もっと簡単に、スムーズに、そして美しく仕上がるはずでした。
でも実際に自分でやってみると、想定外のことが起こり、途中で暗礁に乗り上げたりします。
もっとも、「想定外」というのは、
結局、自分が想定できていなかったというだけのことなのかもしれませんが…

こんなふうに、いろいろなことを自分でやってみようとするので、
道具や材料がどんどんたまっていきます。
その結果、家の中がより整理できない状態になっていきます。
そんな大変な思いをしてまで、なぜやろうとするのだろうか、
と自問することがあります。
理由の一つは、私のケチな性格にあるのかもしれません。
「自分でやれば安く済むだろうと。」
とつい考えてしまうのかもしれません。
おまけに、楽観的な性格(おおざっぱともいえる)からか、
簡単に出来るだろうと想定してしまいます。
結局のところ、自分の労働時間まで考えると、
必ずしも安上がりとは言い切れません。
人に仕事を頼んだほうが、はるかに安く済むに違いありません。
目先の金銭的なことだけを考えてしまっているのかも…
いえ、そうではありません!

人に頼んで仕事をしてもらえば、たしかに効率的かもしれません。
自分の時間を使わないで済みます。
おまけに美しく仕上がります。
しかし、たとえ自分の思い描いたとおりの完璧なものが出来上がらなかったとしても、
自分でやってみることには、それとは別の価値があります。
<自分の中に新たなノウハウが蓄積されるのです。>
このノウハウを通して、自分自身で道を切り開いていった!という自負があります。
また、<自分の考えが至らなかったことにも気づかされます。>
実践的な頭の体操をしているような感じです。

今は、とても便利な時代になりました。
自分がやったことのない作業について、
インターネットからたくさんの情報を得ることができます。
そして、あまり頭をひねり回さなくても作業に入ることができます。
YouTubeなどでは、実際の作業の様子を見ることができます。
自分で作業を終えたあとに動画を見て、
「ああ、こうやればよかったんだ」
と後悔することが多々あります。
ただ、動画の通りにやろうとしても、
実際にやってみるとなかなかそううまくは行きません。
失敗して、かなり頭を使ったりします。
そのほかの利点として、
苦労をしながら作業をすることで、
その仕事に携わっている人たちへの理解も深まります。
実際にいろいろな仕事を経験してみると、
「ああ、こんな大変な仕事を、ずいぶん苦労してやってくれたんだろうな」
という気持ちが湧いてきて、ほかの人に対する尊敬の念と優しさとが生まれます。
そういう意味でも、若い頃には、いろいろなアルバイトを経験したほうがよいと思います。
いろんな理由を付けましたが、
結局のところ、自分でやってみたいという気持ちが勝っているようです。
考えてみると、
私の人生は、このように自分でやってみることの繰り返しだったような気がします。

経験してきたことは、
経験を重ねるにつれて、
余裕を持って進められるようになりますが、
初めてのことをやり始めた途端に、
その余裕はぐらぐらと崩れ始めます。
「こんなこと自分でやらなきゃよかった!」
と後悔します。
そして、ただひたすら一生懸命に取り組むことになってしまいます。
その弊害として、いつまでも自分に自信がつきません。
そんな状態なので、
自分にとってはごく当たり前だと思っていることを、息子から聞かれると、
つい
「そんなこともわからないの?」
というような言い方をしてしまいがちです。
すると、
「何、マウント取ってんの!」
「偉そうに!」
と言われてしまいます。
気が付かないうちに、
自分自身でも成長しているところはあるのでしょう。
自分では何も変わっていない気がしますが…
ドルナッハで行われたライア100周年大会では、
日本のライアビルダーとして紹介されました。
私の作ったライアを有名な先生が褒めてくれました。
自分でも気が付かない間に、大きく成長しているのかもしれません。
いや、きっとそうに違いありません。
これまで育てていただいたニーダー氏の支えに感謝しつつ、
皆さんからの応援に感謝しつつ、
これまで積み重ねてきた努力と経験に自信をもって
これからライアを作っていきたいと思います。

2026/10/02 井手芳弘
