朝、8時ごろに起き、前回たどり着いた路地裏の朝食会場に向かいます。
朝食会場は、小ざっぱりとしていい感じです。
昨日のおどろおどろした路地裏の印象とは大違いです。
大きなガラス扉の近くのテーブルに腰を掛けました。
外は建物に挟まれた狭い水路があり、いい眺めです。
食事を始めようとすると、目の前の水路にゴンドラが現れました。
あの噂に聞いたゴンドラが!
運河の真ん中で「オソーレミヨ」と歌っているイメージのある
ゴンドラがちょうどこの朝食会場の前で90度曲がります。
それも、次から次から。
まるで、ゴンドラ電車です。
どれも、観光客たちが楽しそうに乗っています。
まだ、寒いので皆さん、厚着をしています。
漕ぎ手も厚着しているので、ゴンドラ乗りの雰囲気ではありません。
かろうじてカンカンハットのような、薄円筒形麦わら帽子に少し痕跡を残
しています。
ゴンドラ乗りは巧みな竿さばきでカーブを切っていきます。
こんな路地裏を回るんだ!
まるで、柳川の水路巡りです。
「ひょっとすると、柳川の川下りは、ここベネチアのゴンドラをヒントに
作られたのかも?」と思ってしまいました。
時折、普通の船も混じって走っています。
ここベネチアの街の中は車が走っていません。
入り組んだ水路を車の代わりに船が走っています。
こんな生活あるんだ、と驚いてしまいます。
部屋に戻り、昼頃まで、ペロルの仕事をすると、
疲れをおして研修へ出発です。
今日は、ホテルの人に教えてもらった、ガラス細工の島、ムラノ島へ行く
事にしました。
ホテルから少し歩くとまた水路があり、
そこにたくさんのゴンドラが留っています。
そしてアーチの橋すれすれの高さで通っていきます。
橋の裏側に顔をこすりつけないだろうか、とヒヤヒヤものです。
とても心惹かれたのは、竿を支えるホルダーのような物の造形です。
機能美なのか、装飾が加わっているのか、分かりませんがとても見事です。
鋳物の鉄かブロンズのように見えましたが、
近づいて見ると、木で作られていました。
さらに進むとベネチアの中心であるサンマルコ広場がありました。
えっ、こんなに近い!と思いつつ、広場を通り過ぎていきます。
広場はたくさんの人であふれ、
広場の中心の排水溝のようなところからは水があふれ、
周りのカフェの椅子に迫りつつありました。
大丈夫だろうか、と思いつつ広場から先に進みます
そこにあった刺しゅうの店にお邪魔してから、さらに進みます。
ベネチアはレース刺しゅうでも有名なようです。
迷路のような道を地図とにらめっこしながら進みます。
地図では広いと思った道は、実際は家に挟まれた狭い路地だったりします
やっと水路の橋にたどり着いた、と思ったら、通行止めだったりします。
他の道をたどると、水路で行き止まりです。
まるで、迷路遊びです。
迷路遊びはベネチアをヒントに作られたのではないか、
と思ってしまいます。
どこの通りを歩いても観光客が歩いています。
観光シーズンになったら、いったいどれだけの人でごった返すだろうかと
心配になります。
やっと船着き場にたどり着き、船を待ちます。
そこではみんな、切符のようなものを機械に近づけていますが、
どこを探しても、切符の販売機がありません。
関係者らしき人に聞くと、
「船の中で買ってください。」との返事でした。
どうも、この船着き場は昨日暗闇と不安と混乱の中で、
最初に船が留ったところらしい、ということが分かりました。
しばらく待って、船に乗り込み、切符を買いました。
たくさんの乗客の中で切符を買っているのは私一人だけです。
みんなどこで買っているんだろうと不思議に思いつつ、
船は隣の島まで走ります。
夜とは打って変わって、暖かな色をしています。
つづく
井手芳弘