157 星の話・18

ペロルさんのお家って、街の外れの大きな森のそばにあったんだ。

だから、よく森の中を散歩していた。そこには、やさしい枝先をしたブナの木や、無骨な枝先のカシの木などの大きな木が沢山あって、森はどこまでも続いているかのように感じられた。ところどころにベンチがあるからそこに腰をかけて、静かに森の音に耳を傾けることができた。風に枝先が揺れ、リスたちが飛び回り、動きにアクセントを与えていた。

夏の間、木々はたくさんの葉をつけ、鬱蒼としてお日さまの光を遮ってくれた。秋になると、すべての葉が黄金色や赤や茶色に色づき、森の中に光が溢れたかのように明るく感じられ、心の中も色づいていくかのようだった。ベンチに腰を掛け、その色合いと静寂にたたずんでいると、シーンと静まりかえった瞬間、風もないのに一枚の葉がハッて滑り落ちてくる。時として数枚の葉が同時に… 静寂の間を置きながら、一つ、また一つ…

静寂の隙間を通して別の世界に連れ去られるかのようだった。

そして、地面は黄金色のじゅうたんが敷き詰められ、朝方歩くと、まだ新鮮で水分を含んだ葉の感じが靴を通して伝わってきた。

そして、ふと気がつくんた。

「あれ?あのベンチってあんなところにあったのか。」って。それまで鬱蒼とした木々の中に埋まっていて、遠くにあるように思えていたのに、木々の葉が落ちてくると、木々の間からそれまで見えなかったものが透けて見えてくる。隠されていたものがすべて明らかになっていく。空を見上げると、やはり、葉が落ちた枝先か青空が見え、地面に秋のやさしさに満ちた光が降り注いでくる。森のすべてが、空やお日さまや、星たちに開かれていく感じがする。多分、自分自身の中も、同じように遠くからの光に開かれていくのだろう。

夜には、満天の星空が木々の細い枝先から透けて輝く。

たくさんの星たち、そして、ここには私一人。たくさんの人たちの中のたった一つの私。

しかし、私は私。このたくさんの星たちを含んだ、世界全体を感じる自分。

このたくさんの星たちの背後に、一つの大きな存在があるように感じるように、たくさんの人の中の私という小さな、小さな存在があることで、そこからの広い世界を感じその背後に生き生きとした存在のまなざしを感じる。

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針穴レンズ、もしくはピンホールカメラって知ってる?

穴を小さくすればするほど、世界がはっきりと写ってくる。ちっぽけな星の大きさの穴からたくさんの星空を映すことが出来るんだ。世界を一つのものとして映すには、一度、一つの穴を通って、一つになる必要がある。

一つの中にすべて、すべての中の一つ。

とっても不思議なことだけど。

さあ、ちっぽけになろう。

ちっぽけな星になって、地球上のちっぽけなこの場所に居場所を定めて。

そこからは、広い世界が見える。たくさんの星たちが見える。

そして、一度一つになったものがその背後で微笑みかける。

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