ずっと夕方の空に、金星が明るく輝いていました。

金星は明け方に出ているときは明けの明星、

夕方に出ているときは宵の明星とよばれ、

何か月か毎に、夕暮れの空に明るく輝いたり、

明け方の空にさんぜんと輝いている、印象深い星です。

星というか、正確には惑星です。

恥ずかしい話ですが、私は子どものころ、

学校の理科の天文の授業で習った惑星が、

実際に夜空で輝いて見えている、ということを知りませんでした。

どこか別の世界の出来事として、

実際の星空とは結び付いていませんでした。

そして、惑星の特徴である、逆行という軌道上を逆に動く現象が

実際にどうやって観測できるか、

ということをシュタイナー学校の教員養成で初めて知りました。

教員養成に行って、初めて天動説の考え方に出合い、

黄道十二宮の輪を使って考えることの大切さに気付き、

たくさんのことを学びました。

そして、天動説は現実感を持つためにとても必要な考え方だ

ということが分かりました。

だから、地上にしっかりと根を下ろさないといけない

小学生ぐらいの年代の子どもたちには必要な考え方だ、と思います。

もちろん、中学生ぐらいになると地動説的な考え方が必要となります。

こうして、天動説に目覚めた私は、

誕生月占いで使われるロマンチックな12の星座を道具として、

太陽、月、惑星、星々、の動きを考えてきました。

シュタイナー教育関係の出版社である、

フライエス・ガイステス・レーベン社(ドイツ)から

星座のカレンダーというものが出版されています。

毎年ペロルから限定20部で販売していますが、

そのために、長い時間をかけて日本語訳をつけています。

とても割の合う仕事ではないのですが(恩着せがましいですね)、

私自身のとても良い学びになるので、頑張っています。

その中には、天動説を熟知した(と思っている)私でさえ、

うーんと唸るような、星々、特に惑星の動きが描かれています。

「実際の動きというのはこれほどに複雑なんだ。」

と、感心するばかりです。

今回訳していて、ある文章が気になりました。

<金星が明るく輝き、暗いところでは金星の影ができる>

と書いてあったのです。

金星の明かりでできる影!

なんと魅惑的な言葉でしょう。

それ以上に気になるのは影のシャープさです。

太陽は大きさがあるので、影はぼやけてきます。

でも、金星は大きさを持たないので、その影はぼやけることなく

何処までもシャープな影が続くはずです。

何処までも続くシャープな影を夢想し、

実際に見に行くことにしました。

街の明かりから遠いところを探し、夕暮れを待つことに、

もちろん月が出ていたら月の明るさが邪魔しますので、

その時期を外しています。

カメラを三脚に据え、まず明るく輝く金星を取ってみました。

よく見てみると、下の方にうっすらと細い月が沈んでいます。

待つこと一時間、夜空に金星だけが明るく輝いています。

地面に自分の影を探しますが、

どんなに頑張ってみても影を見ることはできません。

そこで、周りに木がある場所へ移動することにします。

そこだと、金星以外の空は木でおおわれるので、

より影が出やすいと思ったからです。

目を凝らしてみてみても自分の影は地面に見えません。

手足を動かしてみます。

(もし、偶然、そういう私に遭遇したら、さぞかし驚くでしょう)

なんだか、地面の上がモヤモヤと動いているような気がします。

でもそれ以上に、ノイズが感じられます。

要するに、究極の暗いものを見ようとすると、

そのものからの光を受ける以上に、自分の神経の方から発信される

「サーッ」というようなものが闇の中で見えてきて邪魔をします。

なんだか、この感じって、ビデオのモニターのチラつきみたいです。

目視することはあきらめて、写真を撮ることにしました。

三脚を構え、シャッターを1分間開放にして撮ってみました。

地面の影が映っているはずです。

でも、すべて真っ暗です。

「ええい!こうなれば、ウルトラマン時間だ!」

(ピコピコ三分間です)

是が非でも撮って、みんなに自慢してやるんだ!

「4月末でも標高1000mはいまだに寒い!」

かじかんで、しびれた手を我慢しながらシャッター押し続けます。

何か映っているような気がするのは気のせいでしょうか?

2020/06/05

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