─ カエデ・トネリコ・サクラ・ニレ・ケヤキが生み出す世界 ─

ザーレムライアにはカエデ、トネリコ、サクラ、ニレの木が使われています。
表の共鳴板は菩提樹です。
ザーレムライアの後継手として、
ペロルライアにも4種類の木材と新たにケヤキを使用します。

ヨエックスライアやマーティン・ニースライアも
これらの木が使われていますが、
もともとからライアにこれらの木の選択があったわけではありません。
ライアの始まりであるゲルトナーライアは
本体にカエデ、共鳴板にはトウヒ(スプールス)が使われていました。
クラシックの楽器であるバイオリンが
カエデとトウヒで作られていることから、
他の選択はなかったのだと思います。

ザーレムライアのニーダー氏は、
長い時間と手間をかけ、様々な材料で試してみました。
その結果として上記の木の種類に行きつきました。
そして、それぞれの木で響きの個性が生まれてくるのを見出しました。

たくさんの木の種類がある中で、
これらの木だけがライアに使われるのはなぜだろうか、と思いますよね。

一つは木の堅さにあります。
堅くないとピンが緩んでくる可能性があります。
また、堅い木でないと澄んだ深い音が生まれません。

もう一つは繊維の長さにあります。
木の繊維が短いと良い響きが生まれません。

表の共鳴板に関しても同じように繊維の長い木が適しています。
ただ、共鳴板は弦の響きを伝えるために、
なるべく軽い材料が使われます。
トウヒや菩提樹はそれに適した材料です。

材料の種類だけでなく、
木材は長年乾燥させておく必要があります。
長い年月の間に木の中の成分がより硬化してよい響きが生まれます。

要するに、
叩いたときに澄んだ明るい響きがする板が適しています。

私はいろんな板をよく叩きます。
片手にぶら下げて、手でこんこんと叩くと、
軽くて明るい響きがします。

この音がとても好きです。

「木の種類によって響きが全く違うのですか?」
という質問をお受けすることがあります。

ライアメーカーにはそれぞれ固有の響きがあります。
ザーレムライアであれば、ザーレムライアの響きがあり、
その中で木の種類によって個性が分かれて来ます。

ペロルライアもザーレムと同じ構造と材料、および弦を使っているので、
ほぼ同じ響きと考えてもらって良いでしょう

もちろん、一台一台手づくりされていますし、
自然の素材である木が使われていますので、
同じ材料でも、それぞれの個性があります。

それでは、順を追ってそれぞれの木の特徴と生まれる響きについてご紹介します。

<カエデ> 
バランスを求める方に

まず何といっても、カエデです。
もし木の種類に迷ったら、このカエデをお勧めします。

ザーレムでは、堅いBerkahonという
ヨーロッパのカエデの木を使っています。
カナダの国旗になっているのもカエデの一種です。
木肌は薄クリーム色で、きめが細かく、
木目があまり目立ちません。
とてもソフトな印象があります。

ペロルソロソプラノライア第一号・カエデ

カエデには杢(もく)と呼ばれる横縞の模様ができているものがあります。
木が好きな人には、たまらない美しさです。
光の当たり方によって、
きらりきらりと表情を変えるその模様は、
眺めているだけで飽きません。

この美しい模様の板は、
過酷な条件下で長い年数をかけて育った樹から取れます。
とても固く、鉋をかけるとでこぼこになってしまう、
加工が難しい木です。
ザーレムライアでは上製のライアにこの木材が使用されています。

カエデのライアは共鳴板に使われている菩提樹と同系統の明るい色合いで、
肌合いも似ているため、全体的な統一感があります。

カエデの響きの特徴
カエデは、バイオリンにも使われる木材で、硬すぎず、柔らかすぎず、バランスの良い響きがします。

カエデは、どなたにも幅広くお勧めできます。

<サクラ >
癒しの響きを求める方へ

サクラと言えば、日本を代表する木で、
日本の人たちにはとても好まれています。
でも、実はヨーロッパにもたくさんのサクラの木があります。
サクランボもたくさん採れます。

日本には、木材としてのサクラとして、ヤマザクラの木があります。
ヨーロッパのサクラとよく似ています。

サクラの木の色は薄茶色でカエデ同様、
とてもきめが細かく優しい風合いです。
木はもちろん堅いのですが、
他の材料に比べるとやや柔らかく、
ノミやカンナで加工すしやすい木です。
そのことから浮世絵の版木などにも使われていました。

サクラの木のライアは落ち着いた少し暗めの色合いで、
菩提樹のクリーム色とわずかなコントラストがあります。
温かみのある木肌と色が、ソフトな音色とよく合っています。

ザーレムライアソロソプラノ・サクラ

サクラの響きの特徴
音色は他の木の種類と比べるとややソフトで
ライア全体に音が染みわたっていく感じです。
残響もやや長めです。
一音一音が空間に温かみと共に広がっていく感じです。

サクラのライアはゆったりとした演奏をされる方、
音を一音一音感じながら弾きたい方、
音楽療法に携わる方などに特に適しているライアです。

<トネリコ >
高度な演奏をされる方にお勧めです。

トネリコの木は北欧神話にもよく出てくる木です。

白い木肌にはっきりとした木目が特徴です。
道管(木の表面の細かい筋)もはっきりとしていて
カエデと比べると派手な印象です。
とても堅く、重い木です。

トネリコのライアはカエデと同じように明るい色合いなので、
菩提樹の色合いとマッチし、全体的に一体感があります。

ザーレムソロソプラノライア・トネリコ

カエデと同じく杢が入ったものがまれにあります。より堅いです。

トネリコの響きの特徴
カエデに比べると、残響がやや短く、
全体的に少し硬めで、明るくクリアーな音色です。
残響が短いので、一音一音がはっきりと聞こます。
そのため、速く弾いても音が重なりにくく、
消音(弾いた弦に触れて音を消していく行為)の手間も少なくなります。

速い演奏を好まれる方、
人前で演奏される方、
などに向いています。

<ニレ>
湿気のある環境でも安心してお使いいただけます。

草原の中に一本そびえたつニレの木の写真を見ることがあります。
ニレは非常に緻密でしっかりした木材です。
木目は同じニレ科でもあるトネリコに似ていますが、
色合いは茶色に近い色です。

ベネチアの地面を支えるために
海中に埋められていることからも分かるように、水に強い木です。
時々埋もれ木として大木が掘り出されることがあります。

ニレのライアは菩提樹の明るい色合いと
暗いニレの色合いの2色のコントラストが美しいです。
ヨーロッパではこの色合いを好む方が多いようです。

ザーレムソロソプラノライア・ニレ

ニレの響きの特徴

音の感じもトネリコに似て、硬くて明るい音色が特徴です。

湿気による伸縮が少ないことから、
ザーレムライアでも、
東南アジアへライアを送る際には、
ほとんどがニレの木を使っていました。
日本の梅雨のような高湿度の環境でも、
安心して使い続けられる木材です。

速い演奏や、人前で演奏される方、
そんな中で湿度を特に気にされる環境の方にはお勧めです。

<ケヤキ―未知の響き>

ケヤキは日本を代表する木の一つで、
神社建築などによく使われています。

ケヤキもニレ科なので、トネリコやニレと木目はよく似ています。
色合いは黄土色から茶色です。
ニレよりやや薄めで、ニレが黒っぽいのに対し、
やや黄色味がかっています。

木の質はトネリコやニレと違って、
樹脂成分をたくさん含んでいるので、粘っこい感じです。

木目の美しさはたまりません。
ほれぼれします。

ケヤキのライアはニレのライアと同じように
菩提樹との色の対比がはっきりしています。

ケヤキの響の特徴
まだ製作途中なので分かりませんが、
トネリコやニレに似た、明るい、しかし少し落ち着いた音になるのではないか、
と想像しています。
出来上がりましたら、またお知らせ、書き込みします。

最後に表板の共鳴板となる菩提樹を紹介します。

どの木材のモデルも、共鳴板にはすべて菩提樹を使っています。

シューベルトの菩提樹の歌は有名です。
ドイツでは並木として使われていて、
大木が並んでいる写真を見ることがあります。

木材は明るい色合いで、軽く柔らかく、
表面も滑らかで優しい風合いです。
木彫りなどにも使われます。

音響的にとても優れた木材で、
ライアの共鳴板としてザーレムライアのニーダー氏に見いだされました。

ここまで、木の特徴と生まれる響きについてご紹介しましたが
一つ付け加えたいことは、
例えば、初心者だから、トネリコはやめたほうがいい、
というわけではありません。

あくまで音の傾向を書いていますので、
選ばれる際は自分の好きな木を選ばれることをお勧めします。
長いこと一緒に過ごすことになりますから。

同じ木の種類であってもそれぞれに個性があり、
風雪に耐えて育った歴史が刻まれています。
その木と出会い、対話しながら、一台一台作り上げています。

皆さんも、自分だけのライアと出会っていただけたら幸いです。

2026/03/20 井手芳弘

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