夏が終わりました。
今年は、三つの講座をつなげて東京に10日ほどいることになりました。
その中の一つミュージックケア大会が東京ビックサイトで開催されました。
これは講座ではなく楽器の販売でした。
この東京ビックサイトには見本市会場が隣接されさまざまな催しが行われています。
一日目の仕事が終わり、昨日は一日HPの更新の仕事で休めなかったし、
せっかくだからお台場巡りでもしようと、
ユリカモメ(新交通システムの列車)に乗ってただ往復して戻っている帰り、
ふと見上げるととんでもない彩雲が出ていました。
まさか空気の悪い大都会でこのような現象と出会うことなど想定していなかったので、
まったく油断していました。
それからは、すべてが彩雲のために時間が回ります。
仕事は大変だったとか、おなか空いたとか、
今日はどんなことをしなきゃならないかな、などということはすべてすっ飛んでいきます。
今回はカメラをちゃんと携帯していました。
・・・ハア ハア ハア (驚きと動揺による胸の高鳴りと息遣い) ・・・
座席が空いているので場所を変え、写真を撮り始めます。
もちろん誰も私の行動に興味を持つ人はいません。
誰一人として空でこのようなドラマが繰り広げられているなんて気がついていません。
もちろん私だって、今の今まで気がついていなかったのですから。
列車から降りると彩雲が見える場所を大急ぎで探し、たどり着いたのは陸橋の上でした。
こんなところで立ち止まるなんてなんか変なのですが他に場所がないから仕方ありません。
欄干の一部に腰を下ろして、ずーっと、ずーっと眺めていました。
こんなに長いこと彩雲が出続けているのは初めてのような気がします。
少し水気をなくしかけていた私の心に染み渡っていきました。
年を取ってよかったと思うことがあります。
それは、人前で奇異な行動をしても気にならなくなったことです。
もちろん、自意識と自己顕示的な意識から生まれた行動であれば、
後でなんとも恥ずかしい気持ちになるのですが、
このような類の行動には、自意識の何の曇りもありません。
ただ、人に不快な印象を与えないようにと願うばかりです。
これは何の写真だと思いますか?
じつは、切り取られた天井から空を見たところです。
昨年の夏のつれづれにも書いた、光の館の天井です。
この館は屋根が移動式になっていて、
開けると部屋に居ながらにして天井のところの空を直接眺められるようになっています。
この館はいろんな楽しみがあるのですが、
その中でもやはり最高の体験は日の入りと日の出の時間帯にこの切り取られた空を眺めるという体験です。
ただ、雨が少しでも降ると部屋の中に入ってくるので屋根の開放を堅く禁じられています。
光の館体験講座当日も小雨がパラつき参加者全員がサンセットプログラムをあきらめかけていたときに、
外から「雨が上がったぞ!」という声が届き、全員息を呑む中、屋根の開放スイッチを入れました。
そして空が見え始めたとき、全員がアッ!という声を上げました。
だって、曇り空だと思っていた空は驚くほど鮮やかなウルトラマリンの色をしていたからです。
この理解しようのない非現実な色彩にみな打ちのめされ、
ただ時間の移り変わりとともに変化する鮮やかな、
なんとも感情に直接働きかける色彩と立ち現れる
魑魅魍魎(ちみもうりょう)ならぬ補色の数々の現象に
芋の子のように畳の上で身を任せることになりました
(この写真の掲載は参加者から堅く禁じられることになりました)
空がいつの間にか真っ黒になり、ライトプログラムが終わった後、
皆混乱と長い集中で朦朧とした意識の中で、誰かが叫びました
「本当の色はいったいどうなんだいったい?」
「それじゃ 照明を消してみようじゃないか。」別の誰かが答えました。
<そうだ照明を消そうという合唱> そこで照明を消すと、
「うおっ!」という驚きとも雄たけびとも取れる声が部屋中に響き渡りました。
<全員が畳から飛び起き、そのうちの数人が天井を指差している>
なんと、それまで真っ黒だった空が一瞬で真っ白に変わってしまったのです。
参加者は、それから、また照明をつけたり消したりと、何度もこの体験を繰り返すのでした。
この照明がついたり消えたりする光景を遠くから見ていた人はさぞかし不思議に思ったことでしょう。
<この文章にはわずかの誇張が入っているのでご了承ください。>
PS. あまりもの強烈な色彩の体験に疲れきり、
朝のサンライズプログラムで眠り込む参加者たちが続出しました。
なんと、私もその一人でした。
何たる一生の不覚、リベンジだ!
2006.09.01.