97 君の虹 ボクの虹

お日様が心地よくあくびをしているお昼時、

水道の蛇口をいっぱいに開き、

ホースから勢いよく真っ青な空に水を撒き散らす。

水の粒たちは、狭いホースから開放され、嬉しそうに飛びはねる。

その喜びを表すかのように、鮮やかな虹が目の前に現れる。

雨上がりの遠くの空にできる大きな虹と比べると

それは小さくて可愛い虹だけど、

でも、よくよく見ると、その虹はきれいなまん丸の虹の輪

そして、そのわっかの真ん中には、なんと私の頭の影。

私が右に歩くと、虹も右。

私が左に歩くと、虹も左。

私が歩くと虹の輪も付いてくる。

真ん中の私の影もついてくる。

「ねえ、何してんの?」「ホースを持って行ったり来たりして。」

「虹を見てるんだ。自分の影の周りにできているきれいな虹を。」

「えっ、いいな。」

「ねえ、私には見えないんだけど・・・」

「パパの影の周りには虹なんて見えないよ。」

「ずるい、自分ばっかり・・・」

「えっ?ずるいって?そんな・・・」

「自分の影見てごらんよ。ほら、ボクからは見えないけれど、

君の影の回りにも虹ができているはずだよ。」

あのね、人はね。自分の虹しか見ることができないんだよ。

だって、虹は自分の頭の影の周りにできているから。

君は、ボクの虹を見ることができないように、ボクは君の虹を見ることはできないんだ。

ちょっとさびしいかな。

だからね、君がその場所を離れたら、ボクはその場所に行こうと思うんだ。

そしたらさ、君の場所から虹を見ることができるだろ。

君がどんな虹を見ていたかを感じることができるんじゃないかと思うから。

どうして虹が見えるか分かるかい

それはね

お日様があって

私がいて

その二つは繋がってる、ってことの証なんだよ。

なぜって、今はそのことは難しくって分からないかもしれないけれど。

でも、よかったらこの言葉は覚えていてほしいなあ。

 

2008.05.02.

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