いつもこの時期になると、
恒例行事となった星座のカレンダーの翻訳をしています。
ドイツのフライエス・ガイステス・レーベンという
シュタイナー関係の出版社から発行されている星座のカレンダーには、
次年度の星座と惑星の動き、
それにまつわる歴史的史実が書かれています。
今年も大変な思いをしながら説明文を翻訳しました。
今年は少し楽をしようと AI に翻訳を試みましたが、
年代や人名、星座名などは正しく訳されるものの、
内容の意味が通らず、
結局ほとんど自分で翻訳し直すことになりました。
かなり大変な作業ですが、
このおかげで私の天体に対する理解は
よりバージョンアップしています。
まだまだ、知らないことが沢山あることに驚く共に、
星々の奥深さに嬉しくなります。
不思議なことに、この作業を終えて夜空を眺めると、
以前よりも星が輝いて見える気がします。
多分、星たちが私の作業を喜んでくれているのだと思います。
苦労することに無駄はないのですよね…
いつしか、星空から音楽が聞こえてくるようなそんな気もします。
先日、自然観察会を行いました。
影の観察がテーマでしたので、
天気が悪いと観察ができないお天気任せの観察会でした。
幸いなことに、
私の日ごろの行いと、
参加者の日ごろの行いがよかったので、
抜けるような青空の元、
観察することができました。
場所は都会の真ん中で、
すぐそばにサクラの木がありました。
葉が黄色に色づいています。
早春に一足先に花を咲かせる河津桜です。
春先に見たときはそれは美しい花を咲かせていました。
ソメイヨシノやヤエザクラが赤くなるのに対し、
この桜はイチョウのように黄色です。
しばらくそこで立ちどまり、
観察の始まりです。
まず、お日様を背にして葉を観察します。
日向ぼっこの大家でもある私は、
この背中からお日様が当たる感覚は慣れ親しんでいます。
木の葉がお日さまの光を受けている、という感覚が強くします。
なんだか、子ども時代を思い出す、懐かしさです。
「秋を思い出す。」と感じられる方もおられました。
次に、木の中に入ってお日様の光を透かして見てみます。
過去の懐かしさを感じるというよりは、
何か自分自身がぼーっとしていくような、
時間を無くしたような感覚が生まれます。
物に当たった光を感じるというよりは
物自体を感じるような気がします。
そのことを話すと
皆さんも結構似たような感覚を持たれているようでした。
この感覚は人がある程度共通に持つもののようです。
そこで「私たちが認識しているのは単なる色であって、
反射も透過も私たちの考えなんです。」
と言って参加者を煙に巻きます。
そうしていると、通りがかりの人達も、一緒になって
「ああきれいだねー!」
と眺めています。
「葉の透ける美しさを感じておられるのですか?」
と話しかけようとすると、
そのまま去って行かれました。
気づかれなかったのか、
変な人に関わり合いになりたくない、と思われたのか謎です。
次は外灯の柱の影の観察です。
影が地面から離れてぼやけたところに、
指で格子を作った影を重ねて、
木漏れ日の〇を作ります。
それから、その木漏れ日が〇から半月になり、
消えていく様子を観察します。
これもまた歩道でやっているので、
通りかかる皆さんは皆不審そうに見ていきます。
今度は人通りから離れたところで観察を試みます。
小さな公園にちょうどいい小さな木があったので、
そこで葉の形の影が
木漏れ日の円い形に変わる過程を観察することにします。
人がいないと思ったら、
ベンチに1人の女性が座っておられます。
影の移り変わりを紙に映して観察しているうちに、
何時しかその方の姿はなくなっていました。

そのあと、
<光を透かせた葉がどんな条件の時に一番輝くか?>
の観察をします。
皆さん、ワイワイ言いながら活気に満ちています。
ついでに紅葉やほかの木の観察までしてしまい、
訳の分からない現象に出会い、混乱する羽目に陥ります。
しばらく歩くとフェンスがありました。
早速、網の模様がどう変化していくかと観察を始めます。
白い紙に黒い針金の影の部分を映した後、
だんだんと白い紙をフェンスから離していきます。
すると影の黒い筋がだんだんとぼやけてきて、
最後に反転して白くなります。
皆さんとても驚かれています。
「これからマジックをやります。」
と最初に言うのを忘れました。
皆さん、きっと私のことを
マジシャンと思ったに違いありません。
今度は、地面に淡い縦筋の明るい部分が見えます。
車が通って影を作るとさらにその白が際立ちます。
「どこからの光だろう?」
鉄則は、光っているところから見てみることです。
地面に顔を近づけて見ると、
向こう側の窓が数本の棒越しに輝いて見えます。
皆さん交代で見てみます。
路地なのに車が頻繁に来るので、
車の合間を縫っての観察です。
明らかに、車の人たちは不審な顔つきです。
少し歩くと、お月様が現れました。
ポケットから白い球を取り出して、
お月様と白い球に同じ影ができているのを観察します。
通りがかりの人の不審感は絶頂です。

しばらく歩くと、今度は陸橋です。
陸橋の欄干の影の観察の始まりです。
ポケットから今度は割りばしを取り出し、皆さんに配ります。
日本の欄干の影を探し、その陰の延長線の重なりを探します。
皆さん、横並びになり、
目の近くで割りばしを交差させます。
もうこれは不審を通り越して、異様でしかありません。
橋の反対側を、
かなり不思議な顔をして男の方が通りかかりました。
「あの~…、今、影の観察をしているだけですのでご安心ください!」
というと、安心された表情に変わられました。
「変な宗教だと思いました?」
と訊くと、
「ええ、そう思いました!」
との答えでした。
その後、しばらく歩き、
線路の谷間を挟んで
反対側の離れた土手の草原に自分の影を探す観察です。
皆さん、自分の影を見つけるために、
一生懸命手を振っています。
<誰に手を振っているんだろうね…あの人たち>
って思われていたに違いありません。
一周して戻ってきたときには、お日様は沈みかけていました。
「お日様、ありがとう!」
「おかげでたくさん観察ができました。」
でも観察に熱中し、写真を撮り忘れてしまいました…
皆さん気を付けてください。
観察をやりすぎると、
知らず知らずに変な人になってしまいますので…
2025/12/05 井手芳弘
