114 時が止まるとき
日々の喧騒の中、車を走らせる。
心もベルトコンベアーになりつつ、立ち止まることもなく流れていく。
そこにはモーターの音と歯車の音とベルトの音。
止められない、止められない。
忙しいのに止めたら大変。
少しの間も?
どうやって?
車を脇道に走らせ、止める。
そして、エンジンを切る。
深く大きな息を吸い込む。
そこに広がるのは全くの別世界。
自分の意識が突然自分の中の永遠の流れの中に入り込む。
音はない。
そこには開かれた静寂の空間。
異空間。
その静けさをより深め、静まりをより沁み込ませるのは不思議にも、波立つ水面。
波は、ある一定のリズムを持ちながら、心のひだを引き連れるように動いていく。
(同じ動きでも、先ほどのベルトコンベアーの動きとかくも違うのはなぜだろう。)
よく心を開いて眺めてみると、いくつもの波がそれぞれのリズムと大きさと速さをもちながらら流れていく。
それはいろんなとこからやってくる知らせのようでもある。
ゆっくりと、しずしずと。
幾重にも重なりながら。
水面に細かい波を引き連れながら、音もなく風が吹き抜ける。
目の前に広がるのは、風の舞台。
日常の意識が遠のく。
ずっととどまり続けたい気持ちを抑えながら、
また、車のエンジンを掛け、走らせる。
2009.01.23.