128 月山研修 Part2

朝早く3時に起きるつもりが4時になってしまう。

外はすでに明るくなっている。

急いで起きると、ばたばたと山小屋を出かけていく。

昨日の水たまりを携えた瞑想岩を通り過ぎ、さらに上りは続く。

昨日の夕焼けが右手に広がっていたのに対し、朝日前の雲が左側に雄大に広がる。

これから昇ってくる朝日を予感させるかのようにその雲のキャンバスの果てが赤く色づいている。

研修6<朝日の雲の観察>

ゆったりとしたシンフォニーが奏でられているかのように変わっていく雲の色合いを聴きながら山道を登る。

山とその雲に挟まれたわずかな隙間から太陽が顔を出す。

山頂に向かってゆっくりした勾配の道が続く。あたりにはお花畑が広がる。

思索の糸が途切れたかのように、突然建物が現れる。

音楽が止まり 山頂にたどり着いたのを知る。

山頂にたどり着くとあたりは雲一つない。

とてもブロッケン現象にはお目にかかれそうにない。

諦めて、山頂にある月山神社の鳥居をくぐる。

研修7<月山神社参拝>

入口で入場料を払い、神主さんにお祓いをしてもらう。

<ひとがた>を手に持ち、お祓いをしてもらうと、そのひとがたを体の何カ所かに当て、体の邪気を取る

(他に人がいなかったので、長い時間体に当ててたくさんの邪気を取る。頭にはとくに長い時間当てる)。

そのあと、そのひとがたを足もとの水盆に落とす。

そのあと、ご神体の鏡に参拝する。

やはりここにも…

山頂の社のすぐ横には電波のアンテナの鉄塔が鎮座して世界を治めていた。

神社を離れる。

コーヒーの看板にひかれ、頂上小屋へ入る。

山頂でコーヒーが飲めるなんて…

とても美味しいコーヒーをついお代わりしながら、管理人のおばさんに話を聞く。

昨日はなんと誰も泊まり客がいなかったとのこと。

夕方にとても奇麗なブロッケン現象が出ていて、

神社の人たちも皆出てきて、それを楽しんだとのこと。

そうだったのか… とたんに後悔の念が起きる。

自分が、下で見えない、見えないと、雲の隙間からやってくる太陽を尻目に

ブロッケン現象を探していた時に、

その薄い雲の上では、その雲をスクリーンにして美しいブロッケン現象があらわれていたのか…

神主さんたちが、白装束と袴を着て驚き、興奮しながら手を揚げ、

手を振り、歓声を上げてブロッケン現象を楽しんでいる姿が浮かんでくる。

どういうわけか、イメージの中では顔には光がさしている(現実には光は後ろからさすからあり得ない)。

でも、9合目小屋までたどり着いたのだって、よくやったことかもしれない…

だって、初めは8合目小屋に泊まろうとして満杯で泊まれなかったから、登ってこれたんだし…

と、自分を慰めながら、でも、試合に負け、打ちひしがれた選手のように、

肩を落として何とはなしに歩いていく。

あたりは山頂のお花畑が広がる。

おひさまはすでに高くから光を投げかける。

どこからか、声が聞こえる。

 

あきらめるな

どんなに絶望的に見えてもあきらめるな、

最後まで可能性の糸を手放すな。

捜せ、

捜せ

不可能の裏側へ辿りつけ

 

ふと、山頂の突端に辿り着く…

そこからは急な斜面になり、霧が斜面を登ってくる。

背後には高くなったけれど、輝く太陽。

胸が突然高鳴る。

とりあえず、条件は整った。

 

研修8<ブロッケン現象を探す>

なるべく自分の頭の影が遠くに投影されるような、

斜面で背後がなるべく暗くなっている草の場所を探す。

少しでも条件をよくするために道の上の大きな石の上に立つ。

不安定な石の上でぐらつきながら、

霧がスクリーンとして自分の頭の影を映すような条件を待つ。

待つ。

きっと現れるはずだ…

自分の知識を総動員させる。

 

一瞬、周りの霧がうっすらと白く輝いたと思うと、

自分の影がはっきりと映り、その周りに虹の輪が現れる。

そして消える。

また待つ、

霧の流れとともに、影と虹の輪が現れる。

何度も、何度もあらわれては消えていくブロッケンを眺める。

ふと、霧の先の斜面の突端にある鳥居に気づく

あの崖の突端のところにたどりつけばもっと…

急いで岩を降り、斜面を降りて突端に立つ、そこは鍛冶神社

そこには、あきらめずに歩いてきた褒美のように、

ブロッケンの虹の周りを大きな白虹が輝いていた。

 

2009.08.21.

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