別当出合(べっとうであい)まで車を走らせ、そこに車を止めると、

リュックを背負って出発です。

すぐに登山センターがあり、そこで登山名簿に記帳し、

横を見ると、熊に出会った時の対処法などが書かれています。

「そうなんだ、熊いるんだ!」

毎回、本州の山に登るときに驚いてしまいます。

九州にはくまモンはいますが、熊は絶滅してしまいました。

子どものときに聞いていた、<死んだふりをすればいい、>とは

どこにも書いてありませんでした。

雨が降り出していますが、とにかく登ることに。

ひたすら、ゆっくりと雨の中を登っていきます。

「そういえば、月山の時も霧の中ずっと登ったな。」

そう思いながら歩いていると、火口域2㎞圏内という看板がありました。

えっ!白山って、火山?

御岳山の恐怖がよみがえります。

御岳山が噴火した次の日に登山しようとしていて、

近くに行っていたからです。

それから、家族から火山登山禁止令が出ているのです。

今回は知らなかった、ということで済ませることにします。

途中の避難小屋で一休み。

ズボンとシャツを絞ると水がジャーっと落ちてきます。

ウィンドブレーカーを着ていますが、焼け石に水(?)、

下のシャツはずぶ濡れです。もちろんズボン、靴、靴下もビショビショ。

手はしびれて、そこへ、完全防水の親子三代の人たちがやってきました。

「やっぱり、あれでなくっちゃね!」

強く、納得させられました。   

  *  *

途中で会う人はほとんどありません。

夏だというのに手はかじかんで、感覚がありません。

だいぶん登ったところで、

自転車のヘルメットのようなものをかぶり、

おそろいのイカしたトレーニングウェアと両手にストックを持った

3人の若者に会いました。

何をしているのか聞いてみると、なんと山岳救助隊の人たちでした。

「遭難者の救助に来たが、その人が自力で下山したとの連絡を受けて、

戻るところだ。」とのこと。

山の知名度が高いと、こういう方々も活躍されるんだ、と妙に納得です。

「もう少し上ると山小屋だよ。」と教えてくれました。

しばらく登っていくと平らなところに出て、その先に山小屋がありました。

結構大きいところで、中にストーブがあります。

しばらく、ストーブにあたり、服をほんの気持ちだけ乾かすと、出発です。

小屋の隣に白山神社の奥社があり、そこでお参りしました。

巫女さんに聞くと、

ここの奥社は七、八月だけ開いていて、

毎朝、日の出前に神主さんが山頂まで歩いて登る、とのこと。

そして、山頂で、日が出るまで、神社のいわれなど話してくれるそうです。

ここから1時間ぐらいは登らなくてはいけません。

それも白装束で登るそうです。

「まさか、下駄ではなく、靴でしょう。」と訊くと、

「いいえ、下駄です。」との答え。

すごい!の一言です。

多分、健脚の方が選ばれて常駐されるのでしょう。

「巫女さんたちもこの山道を登ってこられたんだ。」と想像すると、

とたんに、白山の険しい山道のイメージが急に優しい小道に変わります。

さすがに巫女の恰好では登られていないとは思いますが…

そういえば、月山ではたくさんの白装束の方々が登られていましたが、

ここ、白山では全く見かけません。

白山も第一級の霊山のはずですが…

雨が降っているせいなのでしょうか。

神社で登山の安全を祈願すると、早速山頂に向かいます。

霧が流れ、雨交じりの風が吹きすさび、あたりは何も見えません。

ゴーっという音だけが響きます。

山頂にあるお社が見えてきました。

お参りすると、そこから50mぐらい行った山頂に到着!

何にも見えません。

リュックを下ろして、

オイリュトミーのI・A・Oの動きをしました。

空とつながったような気がしました。

山小屋まで降りて食堂でラーメンを食べていると、

いきなり雷が鳴り、雨が激しく降り始めました。

しばらく、山小屋で休息した後、

まだ雨の降る中、山を下りていきました。

かなり降りて行ったところで、雨が上がり、

霧が晴れていきました。

山裾は、はるかに続き、遠くには平野が見えました。

辺りの山々も壮大に連なって現れています。

自分がどんなに眺めのいいところにいたのか、

ということを実感しました。

2019/10/04 井手芳弘

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