相変わらず、新型コロナウィルスの猛威は続いています。

私は、ひたすら自宅で木工作業に取り組んでいます。

私の部屋の整理は…進んでいません。

ただ今、水害で水没したライアの修理に取り組んでいます。

昨年の台風による被害で水没したものです。

ライアの持ち主は、家が浸水する前に急いで避難され、

そのあと家に近づくこともできず、

そのままの状態で数日間置かれていたそうです。

「どうにかできないでしょうか?」ということで、

弦をすぐに取ってもらい、ダメもとで送っていただきました。

ケースを開けると、届いたライアはまだしっかり濡れていて、

板は伸び、接着面がはがれていました。

おまけに、ケースからもライアからも嫌なにおいがしています。

ライアの表面やブリッジは黒く変色したり、赤い色がついたり散々です。

あらためて、洪水というものの被害の大きさを実感しました。

それにしても、これだけ過酷な条件の中、よくこの状態で持ちこたえたと、

感心してしまいます。

過酷な状態になった時に、初めてその本質が現れてくるような気がします。

水分を乾燥させるのに何か月か置きました。

まずピンを抜き、次に細いピンを抜き、フレットも取り、板の状態だけにしました。

それから、はがれた接着面を綺麗に磨き、形を整えながら接着していきます。

水没してしまったライアは残念ながら完全には元の形に戻りませんでした。

手を尽くして戻すことは可能に思われましたが、

そうすると構造上、その部分が割れてくるだろうと想定できました。

ライアの貼り付けが終わりました。

新たな形を受け入れつつ、形を整えていきます。

そして、磨きの作業に入ります。

表面のある部分はシミが深く入って削っても取れません。

漂白などを試みましたが、効果がありません。

受けた傷の大きさをひしひしと感じます。

この部分の構造を考えると、これ以上木に負担をかけるのが心配です。

シミを残したままにすることにしました。

これはこれで、水害を受けたという出来事の証として残っていてもいいのかも、と考えを変えました。

ブリッジの黒ずみは何とか取ることができました。

綺麗に磨き上げた後、塗装に入ります。

バイオリンニスを塗っては磨き、塗っては磨きを繰り返していくうちに、

シミの部分は、木の中の色合いのように美しく同化していきました。

初めて見た人はきっと木の風合いだと思うでしょう。

塗装というのはそのような効果もある、ということを学んだ気がします。

においも塗装することで気にならなくなりました。

美しく仕上がったライアに再び、フレットを入れ、細いピンを打ち、新しいピンを差し込みました。

あとは弦張りを待つのみです。

どのような響きが新たに生まれるのか、楽しみです。

このライアの修理で私はたくさんのことを学んだ気がします。

このような美しさもあるのだということを知りました。

修理以前のライアの写真を取り忘れました。

2020/05/01  井手芳弘

つれづれ386 水没したライアの修理」への 5 件のコメント

  1. つれづれ、拝見しました。
    大変な作業に取り組んでくださったこと、心やら感謝申し上げます。

    新しい命に出会える日には、この世界もキラキラと輝いていることを願います。

    1. 根本様
      つれづれ、読んでいただきありがとうございます。
      状況を連絡せずに失礼しました。
      トライしてうまくいきそうだったので、アップしました。
      ただ今弦張り中です。ケースの方がまだ補修が出来上がっていません。
      出来上がり次第、ご連絡します。
      おかげさまで、たくさんのことを学ばさせていただきました。
      ペロルいで

  2. 『過酷な状態になったときに、初めてその本質が現れて来る…』ということは、今の国の状態にも現れていることのように思いました…危機のときに、人も物事も、その本質が試される。

    水没して楽器としては思わぬ状況に陥ってしまったライアーですが、見事に復活したように思いました。それは、このライアーが持つ礎であり、樹木の持つ精霊のチカラのようなものが、楽器となったライアーの奥底にキチンと保たれている証しでもあり、更にライアーという楽器を愛し、熟知した技量を持つ井出さんでなければ、このライアーは復活出来なかったことでしょう。貴重なライアーです。
    どんな響きが蘇るのでしょう…同じライアー奏者として、嬉しい記事を読ませて頂きました。ありがとうございました。

  3. ごめんなさい、井手さんのお名前の書き方を、違って書いてしました…
    なんという失礼をしてしまったことでしょう。。
    たいへん申し訳ありません。お詫び致します。

    井手芳弘 様
             髙松彩子

    1. 髙松彩子様
      漢字の間違いはいつものことなのでお気になさらないでください。
      つれづれ、読んでいただいてありがとうございます。
      大変な状況になったときに、本質が問われる、ということは本当にそう感じます。
      そんな人間になりたいと思います。
      また、受けた傷が、美しさに変わっていけるようになりたいと思いました。
      たくさんのことを学ばせてもらいました。
      ペロル井手芳弘

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