309 梅林

バイリンガルという言葉は聞いたことがありますが、

梅林ガールは、まだ聞いたことがありません。

先日、牛尾梅林というところに行ってきました。

らせん教室の下見のためです。

佐賀県にある、

小さな山全体が梅林になっているところで、

梅の花が満開の時も

平日はそれほど人がいないのでとてものんびりとできます。

お店も数件出ているだけで、

梅林の中でお弁当を食べても

何も言われません(私以外、誰も食べていませんでした。)

とても、都会では考えられない状況です。

お弁当を食べた後、

確か以前あった、梅が枝餅の出店のところに向かいます。

デザートです。

大宰府近くの高速のパーキングでは

焼きたての梅が枝餅を1個注文するのが常です。

この前行った時に、

「焼きたてください!」と言ったら、

「一個だね!」って言われました。

まさか、顔を覚えられた???、とどっきりしながら、

「ど、ど、どうしてわかるんですか?」ってきいたら、

「顔に書いてある!」と言われました。

思わず、顔をさすってしまいました。

ここの梅林では、そんなことは言いません。

おとなしく、「一個買えますか?」って

聞く程度です。

 

お店のおじさんは、

6個セットの中から1つだけ取り出して渡してくれました。

ほかにも、草餅屋さん、梅干し屋さん、

焼きとうもろこし屋さん、などがのんびりと店を出しています。

梅が枝餅を頬張りながら、

ふと、「ここに売っている梅干しって、

ここの梅林で取れた梅で作っているのだろうか?」

という問いが湧いてきました。

「もしそうだったら、

入場料代わりに少しでも買ってあげた方がいいのかも。」

と考えたのです。
だって、これだけ素晴らしいのに無料ですよ。

行きに通り過ぎた、

一軒だけ離れたお店に入ると、

お茶を買い、

おもむろに「ここに梅林の店の梅はここで取れたものですか?」

と尋ねました。

すると、お店の女性の方は

「そうですよ、ここで取れた梅を売っているんですよ。」

との返事。

「私も自分のところでとれた梅で作っています。」

「私のところは、3反ぐらいしか作っていないから、

農協とか出さず、ここだけで売っています。」

「だから、農薬も使っていません。」

よく見ると、外に無農薬梅を使用と書いてあります。

「梅林をやっていてももうからないし、

自分の人件費も出ないくらいなんだけど、

自分の親から受け継いだ梅林を

荒らしてしまうのは心苦しいんです。」との話。

「わかる わかる。」と、つい相づちを打ってしまいます。

私も、母が元気なころは

一緒に田んぼづくりをしていました。

労力をかけた割にはほとんど収入はなく、

「母親の気持ちが収まればいいや。」

ぐらいの気持ちでやっていたからです。

日本のコメの生産はこのような力によって

支えられているところが大きいのかもしれません。

私の地元では、まだ多くの人たちが、

そんな感じで勤めの合間に頑張っています。

「昔はそれでも、今よりはお金になったと思います。

あまり買うものはないし、

保険料も払ってなかったし。肥料代や農薬代もいらなかった。」

「薬を掛けんと、表面にポチポチが出来て、

市場で値が付かんとですよ。」

「うちはこうやって直接売っているから大丈夫ですけどね。」

「母親がですね。」

お店の方の話が続きます。

「死ぬ間際に、こう言い残していったんですよ。

『荒れた梅林がなかか、

空の高かとこかいしっかりみとるけんね。』って。」

「自分のところだけじゃなく、他の人のところもですよ!」

「それは、強烈ですね。」

「でも、それだけお母さんは梅林と共に生きてきて、

それが人生の支えだったのかもしれませんね。」

「それは、ある意味幸せだったのかも。」

と答えました。

「梅エキスを試してみませんか?」

といわれ、爪楊枝で取って、

口に入れたとたん・・・
「そんなに入れたら、

大変ですよ。ああ、もう遅か!」

口の中での強烈な刺激と闘いながら、

梅エキスを作る工程の手間の話をききました。

昔は水が良くなかったので、

水当たりや食当たりの時にこれをなめたらよくなっていたこと。

薬の仕事をしている人が、

これがいいってって愛用していた話をききました。

「ここの人たちは、梅が咲くころに合わせて、

下草刈りをすることがあるんです。

梅を見に来る人が中に入れるように。」

狭くて小さいお店のとっても奥の広い話です

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