今年の夏は大変な暑さです。
頭の中が煮え返りそうです。
そんな中、醍醐味はやはり入道雲です。
気温が高い分、入道雲は息づいて天まで昇っていきます。
樹々からほとばしるように聞こえてくるアブラゼミの合唱に支えられながら、
空高くそびえています。
想い出の夏も、入道雲とセミがセットになって記憶の中に留まっています。

先日、東京へ飛行機で出かけました。

夏の飛行機の楽しみは、なんといっても、この入道雲を上から見ることができることです。
九州に近づく迷走台風がやってくる前に、何とか飛ぶことができました。
台風のせいか、空は入道雲の舞台というわけにいかず、全体的に雲が覆っています。

これまで、空を飛んで外を眺めていてたくさんのことを発見しました。
初心者のころは発見するたびに大興奮したものでした。
最近はベテランの域に達してしまい、
雲を見ても、
「なるほど、なるほど、これはこういう現象だな。」と余裕です。
でも、その分つまらなくなっています。

東京に近づくにつれ、空にはいつもの夏の雲が広がってきました。
遠くには上空のジェット気流帯まで達した大入道が君臨しています。
壮観です。

昔、『お母さんと一緒』というNHKの教育テレビでやっていた体操を思い出します。
「大きくなあれ、大きくなあれ、大きくなって天まで届け!」
「あっ!雷さまだ!」
今考えると、なかなか神髄をついたフレーズです。
この体操を自分なりにアレンジして
「もくもくくもくも」と言いながら
手を回して入道雲のジェスチャーをして、
教室の子どもたちに大受けしたことを思い出しました。

この時期に起きる雲の現象として、餅焼き現象(私が名付けました)
があります。
七輪の上に網を敷き、その上に餅を規則正しく乗せている状態を想像してみてください。
炭がおきると、餅がいい感じに膨らみ始めます。
九州あたりは丸餅で、関東に行くにつれ角餅になってきます。
膨らんだ餅は隣の餅とくっつきながら大きく高く膨らんでいきます。
網に乗っていますので、底は平らにしています。

雲の場合も同じように、
高度1000Mぐらいのところに餅焼き網があり、
その上にあたかも餅が縦横に規則正しく乗っているかのように
小さな雲が並んでいます。

膨らんで、ゴジラになったり、大魔王になったり、プードルになったりします。
ほとんど膨らんでいないものもあります。
なんだか、砂糖醤油を付けて食べたくなります。

こういう情景も空から眺めることができます。

島が煙を吐いているように見えます。
海面より島の方が表面温度が高いため、上昇気流が起きているのでしょう。
面白いので写真を撮ってみます。

小さな岩礁に波が当たり
きれいにそろった波の縞模様が複雑になっています。

空の高いところに薄い羽衣みたいな雲が移動していきます。
「きれいな雲だ!」
写真を撮り終えると、
雲が虹色に変化していきます。

「えっ?!」

急いで動画を取ろうとしますが、間に合いません。

「雲のベテランさん、何にもわかってないやん!」

虹色の雲は笑いながら通り過ぎていきます。
次に来たら、と待ち構えますが、
同じような雲はもう現れません。

いよいよ降下を始めます。
あたりには中程度の小入道がひしめき合っています。

降下時の楽しみは、
この小入道の中に飛行機で突っ込んでいくアトラクションです。

巨大なそびえ立った白い岩山が眼前に迫って来ます。
「お~っ!」「絶体絶命!」と心の中で叫びます。
衝突した瞬間窓の外は真っ白な霧に包まれます。
次の瞬間、また岩山の世界が広がります。

しっかりと立体の形を持っているのに、
その中を抜けていけるのは何とも不思議です。
<のれんにうでおし>という言葉がありますが、
<雲に小判>、いや<雲に体当たり>という言葉があってもよさそうです。

着陸して、地上から小入道を眺めてみると、意外に巨大です。
いままで、巨大な入道雲だ、
と思っていたものの多くは小入道だったのかもしれません。

夕暮れ時、辺りが薄暗くなった中、
稲光で入道雲全体が明るく輝くのを見ると、
青森のねぶたの山車を思いだします。
ちょうど夏の暑いころ、ねぶたの山車が町を練り歩きます。

この前、青森県出身の方とお話しする機会がありました。
昔は、街を練り歩いた後、山車を川に流したそうです。
なんと、ねぶたは巨大な灯篭だったのです。
さぞかし勇壮な精霊流しだったことでしょう。

また、昔は電球ではなくろうそくが使われていたため、
ねぶた同士を当てると貼られた和紙に火がついて燃え、
骨組みだけになることがよくあったそうです。
そこで、急いで紙を張り直し、絵を描き次の日にはまた山車を出したそうです。
エネルギーに満ちあふれた祭りだったようです。

ちなみに昔、弘前は文化の中心地で、
ねぷた(弘前ではねぶたではなくねぷた、と言うそうです)
も青森の物とは違い縦長の高いものだそうで、
絵も素晴らしいそうです。
皆さん、こちらのねぷたもぜひ訪れてみてください。

入道雲を見ていると、
地上から離れた異界で、
巨大なねぶたの祭りが展開されているような気になってきます。

2023/8/18

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