あれだけ克明に、手に取るように
ヒースロー空港や上海空港での出来事を覚えているのに、
旅行から戻った後の記憶がまったくありません。
福岡空港にどうやって戻ったか、
そこから家にどう帰ったかもすっかり忘れています。
その後の日々も、どう過ごしたかはっきりしません。
ほとんど燃え尽き症候群のようです。
危機に瀕した時、
いかにその状況が鮮明に記憶に残るかが分かります。

その後、日々残された課題に追われていました。
ペロルキンダーハープを作り、
オイリュトミーシュタープを作り、
と忙しい毎日を過ごしていたようです。
ザーレムライアの引継ぎの準備もしなければなりません。

忙しいと、つい逃避したくなるのか、
ずっと遠近法のことが気になって
頭から離れなくなっていました。
それで今回は遠近法について書こうと思っていたところ、
時の流れは早いもので、
もう夏至を迎えることになりました。
今年の夏至には特別な天体イベントがあるので、
急遽内容を変更しました。

今日6月21日は夏至の日です。
一年中で一番昼が長い日です。
北極ではお日様が夜も出っぱなしで、
白クマさんが寝不足になっている日です。
北欧では白夜続きの中、
夏至の時には大きなお祭りをするそうです。
日本でも夏至の祭りをする人たちがいます。
そんな中で気になっているのは満月のことです。

毎年ドイツから星座のカレンダーを取っているのですが、
その中に書いてありました。

なんと、明日22日の満月は、
ここ18年で一番低い軌道を取るとのこと。
そして、私の目測では、
ここ数百年で一番低いのではないかと思われます。
残念ながら、九州では今日明日雨で
お日様もお月様も観察できなさそうですが…

「えっ?満月って高さ…変わるの?」
と思われた方、ご安心ください。
中学の理科の先生(3年しかやっていない)をしていた私も
ドイツに行くまでは気が付いていませんでした。

そうなのです。
一か月に一回やってくる満月は高さが違いますし、
出る場所も違います。
というか、そもそも月は毎日高さを変えています。
更に18年ごとに変化していますし、
その動きは複雑怪奇なものです。

でも、あまり意識に上りませんよね。
不思議なもので、いつもすぐ側(?)にあるのに、
何年たっても月や星のことが分かりません。
星座も意識をもって覚えていかないと
いつまでたっても点の集合です。

「私たちは、宇宙と身近になったのだろうか?」
と自問します。
宇宙船やハップル望遠鏡の美しい画像を通して
宇宙のことをたくさん知るようになりました。
ブラックホールや星雲なども発見されました。
天体望遠鏡を通して星や惑星、
月を観察している人たちもいますが、
実際に身近な星空を意識して眺めている人は
減っているように思います。
都会に住んでいる人たちは、
夜が明るすぎて星空を見たくても見ることができません。
そうではない場所に住んでいる人たちも、
そこに星空があっても、
忙しい日常の中で星空を眺める機会がないのではないでしょうか。

星たちはさぞかし寂しい思いをしていることでしょうね。

それでは、
<なぜ夏至のころの満月は低いのか?>
の説明を試みます。

星占いで誕生月の星座が出てきますが、
空には実際に誕生月の12の星座が
輪を描くように私たちを取り巻いていて、
その輪の上を太陽と月が周っています。
この12の星座の輪を黄道十二宮と呼び、
毎日同じ動きをします。
ふたご座は天空の一番高い位置を駆け巡り、
いて座は一番低い位置を移動します。

太陽や月はこの星座と共に動きます。
太陽は誕生月ごとに一年かけてこの星座を一周します。
夏至のころに、ふたご座に来たときはふたご座と一緒に高く上がり、
冬至のころに、いて座に来たときは低く上がります。

月は一か月で黄道十二宮を周ります。
月は新月や三日月の時には太陽の側にいますが、
満月になると太陽と真反対の位置に来ます。
太陽から離れるほど、満ちてきます。

太陽がふたご座にある夏至のとき、
満月は真反対のいて座に来ています。
いて座に来た月はいて座とともに動くので
冬至の太陽のように低く動いていきます。
満月が夏至の日に近ければ近いほど低く移動します。

このように、黄道十二宮を使えば、
月や太陽の動きを理解することができます。

次に18年周期についてです。
太陽の軌道と月の軌道が同じであれば、
一か月に1度は日食と月食が起きますが、
月の通る軌道と太陽の軌道が
5度ほどずれているおかげでそうはなりません。
月の通る軌道と太陽の軌道が交差するところを
ムーンノードと呼び、
18年で黄道十二宮を時計回りに一周します。
それに合わせて月の軌道と太陽の軌道が
最大(5度)になるところも移動していきます。

今年は最大になるところがふたご座といて座に来ています。

それで、いて座にやってきた6月22日の満月は、
いつもよりも低く(5度)夜空を移動することになります。
つまり、今年の6月22日の満月は18年周期の中で一番低く、
更に夏至と一日違いという近さのため、
18年周期の中でも特に低く昇るので、
数百年で一番低い位置に昇る満月ではないかと考えています。

「ふう~。」
がんばって解説を試みました。

しかし、梅雨なので
残念ながら雲がかかって見えないかもしれません。

見えなかったら12月の冬至のころの満月でリベンジしてください。

この18年来で最大に高く上ります。

2024/06/21 井手芳弘

つれづれ485 夏至の満月」への2件のフィードバック

  1. 井手先生のコメントが流れるプラネタリウムがあったらいいなーと思います

    1. 加勢田成美様、
      コメントありがとうございます。
      そういうプラネタリウムの番組を作りたいと思っています。

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