旅行の前に、ある知り合いの方から言われました。
「今回もハラハラドキドキを期待しています。 」
その時に答えました。
「 いやもうそんなことはありません。」
「期待に添えなくてすみません。」
と答えました。

今回の旅行は全て順調に行きました。
やはり、旅慣れというものでしょうか?
それとも人間的に成長したのでしょうか?
あと空港に行き、飛行機に乗るだけです。

ロンドンの町からヒースロー空港行きのバスに乗り
バスの窓から辺りを眺めながら
今回の旅のいろんな思いが頭の中をかけ巡っていきます。

バスが到着して、空港に向かうところで
私が乗る航空会社のカウンターがどのターミナルにあるかを確認しました。
用意は万全です。
私が乗る飛行機は 第4ターミナルです。
数日前に来た場所なので、様子はよくわかります。
ヒースロー空港の中を航空会社のカウンターを目指して歩きます。
第4ターミナルに着き、電光掲示板の案内を見て、出発便を捜します。
イースタンエアラインの飛行機は見当たりません。
21時ぐらいの時間に1便あるだけです。

どうして出発便の飛行機がないのだろう?
そう思い、側の案内の人に聞いてみます。
「まだ出てきてないかもしれない。」
「しばらく待てば出てくるかも。」
しばらく待ったけどやはり出てきません。

今度は別の人に聞いてみます。
「じゃあ あの人についていってみて。」
と言われ別の人についていきます。
ついていくと、その人は休息所に入っていきました。

仕方なく、また戻り
「ついていった人は休息所に入りました。」と言うと
今度は別の若い男の人を呼んでくれました。
その男の人はわたしの旅程表を見て
「おかしいな…」
「うん!?」
「これ、ガトリック空港だ!」

「*#!?」
「そ、そちらへ行きます!!」
「これからじゃ間に合わないよ。」
突然、余裕しゃくしゃくの皮がベリベリ剥がれます。
突如としてサバイバル態勢です。

現地の航空会社のオフィスに連絡します。
何度掛けても繋がりません。
そのうちに出発時刻が迫ってきます。
あきらめて、仕方なく、中国の本社に連絡します。
幸運にも日本語対応があります。
「旅行社からのチケットなので、そこに連絡してください。」
と言われます。
日本の旅行社のオフィスに連絡します。
「料金がかからないので、こちらから電話を掛け直します。」
ありがたいことです。
電話が掛かってきて、こちらの状況を伝えます。
途中で電話が切れます。
再度電話をすると
「こちらから電話を掛け直します。」
電話をもらって、また最初から本人認証の始まりです。
今度は別の人です。
どうも、本人認証をして、途中で電話が切れると
その先無効になるようです。
なりすまし電話を避けるためでしょうか。
再度状況を伝えます。
「とりあえず、席をキャンセルしましょうね。」
「電話を切らずにお待ちください。」
出発5分前です。
「キャンセルできました。」
一安心です。
「席の変更ができるか、お待ちください。」
長い時間待ちます。
「変更すると10万円以上かかります。」
「キャンセルして、航空券を取り直した方が安くなります。」

勧められるように、帰りの便をキャンセルし
再度ネットで帰りの便探しです。
何か月前から予約した便を、当日取り直しです。
運良く、この空港出発の夜の便が取れました。
別の空港に行く気力はありません。
福岡到着は予定より一日先です。

空港で夜まで待ち、カウンターで搭乗手続きです。
「窓際の席をお願いします。」
「了解です。」
「荷物は、上海でピックアップです。」
「上海の空港で一晩過ごせますか?」
「大丈夫です。」
不注意だったバツとして空港で一晩過ごすつもりです。

飛行機に乗り込むと、翼あたり。
残念だけど、 まあ 夜だからいいか
と思いつつ座ります。
周りはガラガラです。
隣に座った人も前の座席に移り、
三列座席は私1人になりました。
おかげで、横になってロシアの上を寝ながら飛ぶことができました。
ファーストクラス以上です。
後でトイレに行くために後ろの座席を通ると
後部の座席は結構詰まっています。
日頃の行いが良かったんだと思います。

上海空港について入国審査の順番待ちをしていると
係の人から「ビザを持っているか?」と訊かれ
「持ってない。」と伝えると
「ビザがないと出国できない」と言われます。
トランジットだ、と伝えると別の場所を案内され
そこでトランジット用の書類を書くことに。
入国用のカード以外に1枚のA4の紙を渡され
そこにも 質問事項が裏表でびっしり書かれています。
どう考えてもただのアンケートです。
「えっ、 これも書かなきゃいけないの?」
と言うと、係の人は首をこっくりと縦に振ります。
「英語のテストを受けてるみたいだ。」と言うと
その人はニヤッと 笑います。
冗談がわかる人のようです。
なんとか書き終わると テスト用紙は別のところに持って行かれました。

税関を抜けて空港の待合室にやってきました。
結構疲れています。
「日本に着いて疲れ切って、その先仕事ができないのも嫌だから
空港で一晩過ごすのはやーめた。」と罰はとりやめ
ホテルを探すことにします。
Google マップは使えません。
ホテルドットコムでなんとか近くのエアポートホテルを予約できました。
送迎バスがあるということでこのホテルに決めました。
というか、近くはここ1件しかありません。

でも、その送迎バスがどこに来るか探すのが大変です。
案内の人に聞いてもわかりません。
「中国語名がわからないとね~」と言われます。
というか、会話はすべてスマホの自動翻訳です。
何人目かで、やっと ホテル名を突き止めて、中国名を紙に書いてくれます。

そのメモ紙を握りしめ、バス乗り場の場所を探します。
途中subwayでハンバーガーのようなものを買い、
パクつきながらバス停へ。
行き先を書いたバスが来ると言われましたが、
半分信用していないので
来るバスに手当たり次第に紙を見せ確認します。

何台か待った後に
何も書いていない少々くたびれたワゴン車が到着しました。
ダメもとで行き先の紙を見せるとこれだと頷きます。
重いスーツケースを持ち上げ、中に乗り込みます。
近くに立っていた女の人も バスの運転手に紙を見せています。
そして乗り込みました。
向かい側に座ったので、「are you Japanese?」と尋ねると
「 Yes.」との返事です。
「 I‘m too.」と言って、話を聞きます。
かれこれ 1時間以上待っていたとのことでした。
「バスに行き先が書いてあるって言われたんで、探してました。」とのこと。
同じ目にあっていたようです。

バスは夜の道路をひた走ります。
思いのほか長い時間走ります。
ひょっとして違うところに連れて行かれるのではないか
という不安を抱えながら乗り続けます。
でも、飛行機を間違えたことからすると大したことではありません。
やっと到着しました。
とりあえずホテルです。
何もないところにぽつんと一件建っています。

受付の人は制服もなく
ラフな格好のお兄さんとお姉さんが対応しています。
英語がわからないようで、全てスマホの翻訳機に頼っています。
本当にここに予約したのか不安だったのですが
横に立っている木の巨大なオブジェに見覚えがあり、安心します。
ネットのホテルの画像にこのオブジェが載っていました。

受付を済ませ
隣にコンビニがあるということで行ってみました。
ホテル付けとは思えない庶民的な小さなお店でした。
「カードが使えますか?」とダメもとで聞くと
店主のおじさんはスマホゲームの手を止め
ノーノーとの合図です。
仕方なく部屋に戻りましたが
中国元を少し持っていることを思い出し、再挑戦です。
今度は難なく買うことができ
ホテルの部屋でゆっくりと飲むことができました。
ホテルから一歩出ると周りはほとんど何もない場所です。
数年前に訪れた上海の超近代的な街並みとは全く違った
上海の別の一面を見ることができました。
「飛行機を乗り間違わなければこんな体験もできなかったよな。」
と思いました。

めでたし、めでたし。

2024/06/07 井手芳弘

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