先日、上海の楽器メッセに行ってきました。
コロナが蔓延している間は行くことができず、
収まった昨年行こうとしたのですが、
中国のお祭りで領事館が1週間閉館し、
ビザを取ることができず、
断念しました。

今年は五年ぶりのメッセです。

時々、このつれづれを見られた方から、
「いろんなところに行かれていますね。」
という、お言葉をお聞きすることがあります。
仕事で行っているので、観光ではありません。

今回のメインの目的は
新しいライアのハードケースを作ってくれる業者を探すことです。
しばらく訪れていないので、
地下鉄でどこに行けばいいかさえ、
すっかり忘れています。
おろおろしながらの道中です。
カッコよさとは程遠い状態です。

そんな中、便利になったのは、
地下鉄がクレジットカードで乗れるようになったことです。
今のところVISAカードだけですが…
荷物検査は相変わらずです。
「いろんなことが便利になったな」
とつくづく思います。
「それなのに時間がないのはなぜだろうか?」
とも思います。
最近、瞑想修行(日向ぼっことも呼ぶ)もできていません。

駅の案内の人に小さな地下鉄の路線図をもらい、
地図上で、目的のホテルの場所を指し示し、
何とか降りる駅を教えてもらいました。
毎回同じ場所あたりに宿を取っているのに忘れています。
学べていません。

というか、いいわけなのですが、
グーグルマップがうまく機能しないのです。
日本やヨーロッパだと目的地を入れて経路を探すと、
どの乗り物に乗ればいいかの案内が出るのですが、
上海ではうまくいきません。
多分、他のアプリがあるのでしょう。

最初に訪れたときは、
時速420kmのリニアモーターカーに驚き(今回は300km でした)、
荷物検査に驚き、
町中の監視カメラの数に驚き、
警備の人たちにの多さに驚いていました。

何時しかそれば当たり前の風景となり、
監視カメラがどこにあったか、
監視員がどこにいたか、
ほとんど気がつかなくなっている自分がいます。
慣れとは恐ろしいものです。
多分、上海に住んでいる人は全く気にならないのだと思います。

ただ、赤信号なのに何事もないかのように
無灯火で突っ込んでくるバイクの群れには、
相変わらず笑いが止まりません。
青信号で渡っていると、クラクションを鳴らされます。
「何のための信号だろう?」
と思ってしまいます。
「あれだけ、統制の厳しい中国なのに、この無法状態はなぜだろう?」
と思ってしまいます。
さすがにお巡りさんが立っているところでは停まっています。

にぎやかな川沿いの向こう側は
高層ビル群が電飾で鮮やかに浮かび上がっています。
連なる店の中にセブンイレブンの看板が出ています。
立ち寄って腹ごしらえをした後、
ホテルに向かいます。
ここまで来れば、後はわかるので安心です。

何とかホテルについて部屋を案内されたとき、
川沿いの高層ビル群が見える部屋ではないことが判明しました。
「川沿いの部屋がいいんですが…」
というと、
「予約は街側です。」
「川側は高くなります。」
との返答。
それなりに奮発して部屋を取ったのですが、
仕方ありません。
街側の部屋に向かいます。
(後から考えると、川側はいくら追加すればいいか訊けばよかった…)

部屋に入ると、あの素晴らしい夜景は残念ながら見ることができません。
「ああ、あちら側はそれはそれは輝いて華やかなんだろうな。」
と思いながら、窓から眺めます。
部屋は21階なので街側もそれなりに良い眺めです。
照明もそれなりに輝いています。
橋が真っ赤です。
「ま、いいか、これまでこちら側見てないし…」
と思いながら眠りにつきました。

次の朝はいい天気です。
こちらからは見えませんが、川側からお日様が昇っているようです。
建物がお日さまの光を受けて輝いています。
ふと、窓の外の小さな川を眺めてみると、
川面が輝いています。

「えっ!?」
でも周りのビルは
どこも輝いていません。

「やった!」
こちら側の部屋に泊まったことで
この現象を見ることができます。
多分、お日様たちが私のことをかわいそうだと思って、
この現象を起こしてくれたのでしょう。
日頃の行いが良いからでしょう。

以前、岐阜の金華山に登った時にこの現象を見たことがあります。
その時は、しばらくなぜこの現象が起きるか、かなり考えたものです。

早速、どこからこの光が来ているか、探してみます。
多分、あの後ろのビルです。
そして、どうやってその現象が起きるか、
実際の風景にイメージを重ねて考えていきます。
そのためには、川面が輝いていると考えずに、
川面を鏡だと考え、
そこにさかさまに映っているビルの窓が輝いている、
と考えると分かりやすくなります。
水面の鏡を境に、その裏側にこちら側と同じ空間がさかさまに広がっている、
と考える必要があります。
そうすると、川の下の空間に太陽があり、
その光が川の下の空間のビルの窓に当たり、
それが輝いている。
と考えると分かるようになります。
「えっ?」「わかりにくい?」
「……」
ふと、私の足元、地下21階の逆さまになった鏡に映った私から、
ビルの窓はどう見えているだろうと想像してみました。
「ひ、ひょっとして…!」
川の上の実際のビルの窓に映っている太陽が見えているのかも…?
「うん?」
上の世界と下の世界で違うものが映っている?」
「いや、下の世界の私の鏡像も、その鏡像のビルを見ると輝いていない?」

訳が分からなくなっています。
想像の限界を超えています。
「う、う、う、、、」
呆然としながら、窓のそばに座りつくしてしまいます。 
感動と混乱と共に、その現象が幕を閉じました。

「ああ、楽しかった!」
余韻を楽しみながら、
他の作業をしていてふと目を窓の外にやると…
今度は他の水面が輝いています。
今度は、どこだっけ?

サービスは
いつまでたっても終わりません。

多分、日ごろの行いが良すぎるんだろうな…

2025/11/07 井手芳弘

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