2004

この世の中には、どう考えても不思議でわからないことが結構あります。

その中の一つが煙の色です。

皆さん、煙の色って何色だと思いますか。

灰色?青?茶色? 普通は簡単に、灰色、と答えるかもしれません。

しかし、実はそんなに単純なものではないのです。

そのことを示す写真を撮る為にしばらく煙を探していました。

あまりうまくいっていないのですが、ここにある煙を撮ってみました。

(本当はもっとよくわかる写真をとりたいです)。

少しわかりにくいのですが、

暗いバック(山がシルエットになったもの)の手前に煙がたなびいていて、

その煙はそのシルエットの上の明るい空まで昇っていっています。

そのときの煙の色をよく見てみると、

暗い背景の手前にあるときは鮮やかな青い色をしているのに、

それを過ぎて空が始まると、

とたんに茶色のような、オレンジのような色合いに変わってしまいます。

それでは、煙の色は何色か、と聞かれたときになんと答えればいいのでしょうか。

ある場合には、青だし、ある場合には白っぽいし、あるときはオレンジ茶色であるし、

なんて言ったら、「結局煙の色自体は何色なのですか。」と言われてしまいそうですが、

実は不思議なことに煙はある決まった色を持たないのです。

背景の明るさによって自分自身の色を変えているのです。

あらためて、色とは何か、と考えさせられてしまいます。

このことを知ったことで、私はある意味救われました。

というのも、子どもに対する質問の答えたときに

「先生は、あるときはこう言い、別の場面では全く違ったことを言われていて、

全く一貫性がありません。」と指摘を受けていて、

私としては一貫しているつもりだけれど、と考えていたのです。

そう、背景によってその色は違ってくるのです。

ゲーテの色彩論の原現象を学んだときに、

<濁りのある明るい空間を通して暗い空間を見ると青く見え、

濁りのある暗い空間を通して明るい空間を見ると赤く見える>ということを学びました。

前者は空の青であり、後者は沈む前の太陽の赤です。

この現象をいろんなところに探したときに出会ったのが、

一つは遠い山の青、ともう一つは煙の色合いでした。

この煙の色合いに気がついたとき、私は正直言ってぞっとしました。

だって、それはまさに七色に色を変えて昇っていく一匹の龍に見えたからです。

 

悪いことに(?)私は流れる物の動きを学んだことで、

その動きの原理がわかるようになっていたこと、

それにオイリュトミーを三年ほど集中してやったことで

煙の動きを完全に掴んでしまったのです。

つかんでみるとそれは本当に生きた一つの生命体の動きでした。

そして、おまけに移動して違う方向から見ていくと

その色合いが次から次に変化してくるではないですか。

それは、虹色の龍が「ほら見てみろよ。俺はここにいるぜ。」と言いながら、

ニヤリとされた感じでした。

それからというもの、車を走らせるたびに、

野焼きの煙や煙突からの煙が「ほら見てみろよ 俺は昇っているぜ。」

と語りかけてくることから目をそらすのに大変です。

 

それからよく黒い紙の上に色チョークで煙の絵をたくさん描くようになりました。

そもそも、教員養成ゼミナールの授業で黒板絵の練習として、

黒い紙に色チョークで絵を描いたのが始まりで、それからはまってしまったのです。

山や建物の暗い背景から空に向かって昇る煙を描くときに、

暗い背景を青いチョークで描き、それから空の前の部分を茶とオレンジで描いてみると、

不思議や不思議、煙だけでなく、光が差し込んだ空間までも描けてしまいました。

それからいろんなシチュエーションで煙を描いて見ました。

 

秋口によく籾殻焼きをします。

籾を蒔くための土の中に混ぜる為です。

富士山、もしくは開聞岳のように積まれた籾殻の真ん中に煙突が立っていて

そこからさながら火山の噴火のように、でも静かに煙が出てきます。

暗くなる前に焼き終えてしまわなければならないので、

勢い朝早くからやることになります(実は母親にせっつかれてしぶしぶ始める)。

朝日が昇ったばかりの早い空気が静まった時間帯に静々と煙が昇っていくのですが、

それはそれは見事な色合いです。

山の端を過ぎた煙は怪しいオレンジ色に輝き、なんと、その影に目をやると、

美しい紫色をしているではありませんか。

とたんにその苦行が楽しい行為に変わっていきます。

付録として、<雲の鳥>の飛翔の写真も載せました。

本年もお付き合いありがとうございました。

2004.12.17.

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