第23回 トイ・メッセ

いよいよ本来の目的の玩具博─トイ・メッセです。


毎年2月の初旬、ドイツのニュールンベルグという都市で

世界最大のオモチャ博が開催されます。

そこには、世界各地からおもちゃのメーカーが店を並べ、

世界各地から玩具の小売店、それから、輸入業者がやってきます。

会場には、ドイツの伝統的な木のおもちゃ、人形、鉄道模型、ゲーム類、

手作りのための道具や素材、それに、東南アジアを主体としたプラスチックの玩具やぬいぐるみ、

それに、日本のタミヤ、任天堂、セガジャパン、なども大きな店を出しています。

もちろん私の目的はドイツのメーカーです。

昨年は開店と重なり、残念ながら来ることができませんでした。

今回も、ない時間とお金を工面して何とかたどり着いた、と言う感じです。

卸をやっている以上、どうしても行かないわけには行きません。

もちろん、重い体を引きずって行ってみると、ああ行ってよかったな、と思います。


メッセの会場には福岡ドーム(もしくは各地のドームでもよろしいです)

の広さぐらいの展示の建物がいくつも連なり、そこに数限りない店が並んでいます。

そこを歩いていくわけですから、並大抵の運動ではありません。

たぶん、一日5キロメートル(気持ち的には10キロメートル)は歩いているでしょう。

宿に帰ってくると、足がパンパンになります。

途中でいただくパンフを背中に背負い、負荷を受けながらの行軍です。

一昨年など、それまでの無理がたたったのか

(いつも、「井手さんみたいにのんびりとマイペースで生きていられるといいですね。」

と言われます。これは結構自慢です。)

ドイツに着くなり高熱を出してしまいました。

でも、時間とお金を割いてきてベットで寝ているわけにも行きません。

ダウンジャケットのボタンを襟までつめて、熱による寒さに耐えながら、

朦朧とした意識の中でフラフラしながらそれぞれのブース(展示スペース)に着くなり、

いすに倒れこみ、心配した担当者から水やジュースを恵んでいただき、

交渉をするとまた次の目的地で倒れこむと言う有様でした。

でも、3日目になるとその熱がどこかに飛んでいってしまいました。


メッセに来る目的は二つ、一つはすでに取引のあるメーカーと会ってお話しをすること。

もう一つは新たな商品を探すこと、です。

ただ、新たな商品に関しては、すでに日本の業者が探し尽くしているところがあり

(会場ではたくさんの日本の方たちを見かけます)、

ほとんど、期待できないような状態ではあります。

よほど、風変わりなものでもない限り見つけられません。

でも今回、前回のメッセのときから心を寄せていた物の交渉をし、

もうすぐ皆さんにお見せできるかと思います。

自分が本当に気に入ったものと出会うと、とてもうれしいものです。

これも、そのメーカーのたくさんの商品の中から、唯一つ見つけたものでした。

いっそのこと、こちらがほしいものを作ってもらおうか、とさえ考えているところです。

今回は駆け抜けの一週間の旅行でした。

皆さんから、「ドイツへ?いいですね。」などといわれますが、本当にただただ駆け抜けただけでした。


そう、唯一の楽しみは、ニュールンベルクの夜の街のはいかいです。

もちろん、変な意味ではなく、一人で古い町並みの中を歩くのです。

前回なぜだか引っ張られた小高い丘のほうに向かい、凍てつく夜の街の散策、いや徘徊です。

「一人でそんなことやって楽しいの?」

「いや、たまらなく楽しいのです。のどから手が出るほど(?)楽しーい!」

暗い町並みをそぞろ歩く人々の間を抜き(私の周りにはドイツの精霊たちがたたずむ)、

時々日本人の声を耳に挟み、

人影がなくなりながら目指すは丘の上の置き去りにされたようなレストラン。

そこで一杯のビール。ああ、たまらない。

<一つぐらい楽しみあってもいいよね。>

 

2005.04.01.

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