第25回 新芽

年を取ってきたせいでしょうか。

昨年辺りから、目立たない木々の花が気になっています。
桜や梅やモクレン、そして今ならばつつじの花々など、
華やかなな木々の花たちには目が行きますし、草原に生えている草花たちもなじみです。
しかし、例えばカシの木やクスの木などの木々の花はどうしているのか、
考えたことはありませんでした。
いわゆる、意識の外にある、といった感じです。
花というより、それらの木が何の木であるかすら知らないことのほうが多いように思います。
そもそも、これらの木々が気になり始めたのは桜の木の観察を深めていった結果でした。
サクラの観察、モクレンの観察を通して、芽には花芽と葉芽があることを知りました。
その芽が花芽になるか、葉芽になるかははっきりと決められているわけではなく、
その場所や枝振りの力関係で簡単に変わることが出来ます。
ここでは、難しいことを言うのは控えますが(詳しく知りたい方はらせん教室通信をご覧ください)
サクラにしろ、ウメにしろ、モクレンにしろ、花芽は花を咲かせると、
その芽のその木における成長は実として終わりを迎えます。
そうすると、それから先木は成長していくことが出来ず、葉さえ付けることができません。
そこで、葉芽と花芽をバランスよく付けることになります。
若い木には葉芽が多く、成熟した木には花芽が多かったり、
または、伸びようとする場所で葉芽を多く付けることで成長のバランスを保っています。
そういうことを考えつつ、普段ほとんど考えたことのない目立たない植物たちは、
一帯どんな感じになってるのか、花芽と葉芽の関係は?などと考えながら眺めてみたのでした。
そうそれは、少し目立っていて、ずっと気になっていたクスの木です。
確かに花芽と葉芽がありました。
サクラやウメやモクレン(若い枝はそうです)などと同じく、
勢いのある枝先には葉芽から葉だけが伸びていました。
そして少し勢いが無くなった枝には花芽が付いていました。
「ははーん、やっぱり思った通りじゃーねえか。俺の推理にゃ間違いはねえ。」
とご満悦に陥って花芽から出てきた可愛らしい小さな花を眺めていて、花は何処へ、などと考え始めて…

「ああっとおどろく為五郎〜」(為五郎って誰だっけ?)

「こ、こ、こいつは、い、い、いったい…」
な、な、なんと(ちょっとしつこいかな)
一つの花芽から出てきた枝の中に伸びていく枝と花として終わる枝が両方が統合されていたのです。
花を咲かせながら同時に自分自身をも伸ばしていたのです。
先端には伸びていく枝、そして数枚目の葉のところから横芽として花の枝が伸びていました。
なんという賢さでしょうか。
伸びると言うことと花を咲かせるということに関してこのような解決策があるのだ。
それからいくつかの木と知り合いになりました。
そして、一つ一つその花と葉の表現を眺めていきました。
それは、またクスの木とは違った解決策を取っていました。
なんと興味深いことでしょう。
おまけに、眺めているうちにそれぞれの枝ぶりとがとても、ダイナミックに感じられ、美しく見え始めます。
ああ、私の興味はますます人間界から離れていきそうです。
どうしたらいいんだろう。
2005.05.06.

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