やっと旅立った。いつもそう思う。
出発まではいつも、えっ?明日、もう出発?うそでしょう?
何の準備もできていないのに、って思いながら、時間のとの格闘をしながら。
しかし、今回ばかりはいつもの時間との格闘と違う。
飛行機は待ってはくれない。
何とか飛び乗った飛行機。
しかし、それもやっぱり何事もなくではすまされない。
旅に出れば、自分の傾向性をいやというほど知らされる。
メールチェックをギリギリまでしていて、いきなり呼び出される始末。
飛行機に乗り遅れるとばかり、たくさん並ぶ人をなぎ倒し(かき分け)搭乗チェックをしたら、
追い越したあとの女の子がやっぱり呼び出されてるとのこと、二人で珍道中の始まり、
妙な仲間意識と一緒に、飛行機に乗れないかもと心配する彼女をなだめながら、
パスコントロールなどを切り抜ける。
かっこいい!(というか、遅れて迷惑をかけてるでしょう。)
出発からこれじゃ。この先思いやられる。
しかし、この窓からの景色は何度眺めたことだろう。
しかし、今確実にわかることは。
この色合いの中に、地球自身の影が関わっているということ。
何度も眺めながら、そのことにずっと気づかなかった自分が今となっては不思議な感じ。
深まっていくというのはこういうことなんだろうな、と妙に納得する。
それとともに、この景色から今後どんなものが見えるのだろうかと思うととても楽しみ。
やはり出来事は、自分の想像をはるかに超える。
翼のところに当たる太陽の光をみて、ふとあちらの景色はどんなだろうかと思う。
見るからにまぶしそう。
ただ、お日様が出てまぶしいだけジャン。
あんな物見たって、と思いながら、一応大したことないけれど見ておこう。
と重い腰を上げて反対側の最後部の小さな丸い窓にたどり着く。
見るからに外が見えにくい窓。
そこから眺めているとフライトアテンダントの方が、窓中央のつまみを回してくれる。
円盤が回転するとともに、景色の色合いが真っ黒から透明に変化する。
なんと、偏光板になっているではないか。そしてそこから景色を眺めて、更に驚く
そこからは、ほとんど雲平線上(造語です。すみません)にかかる真っ赤な太陽と、
その前にたなびく雲にできる無数の彩雲たち。
それは、今まで見たどんな彩雲よりシックで濃い輝きだった。
その光景がずっとずっと続く。
私は、ただ口と目をあんぐりと空けて眺めるだけ。
「すみません、あの・・・、あの雲の色合いっていつも出ているんでしょうか?」
とフライトアテンダントの方(もちろん日本人)に訊く。
その方は、涼しく笑いながら「はい、大体いつも。」ボクは絶句。
いつも出ていることもすごいけど(これまで何回も飛んでいてまったく気づかなかった。)
そんな、この世的でないものを見ていて、それもいつも、まったく驚いていない彼女もすごい。
こんなものを毎日見ていたら、人間変わるだろうな、ってしみじみ思う。
たどり着いたのは、ヘルシンキ国際空港、
結局日本で乗り継ぎを取らずに飛行機に飛び乗る。
(いいの、こんなんで?と不安だらけ、でも良くその不安を忘れるけど)
飛行機の中で、情報を仕入れて、何とかヘルシンキから乗り継ぐ、
ヘルシンキの航空券販売所がなかなか見つからず、なんとかがんばって探し当て、
航空券を買って国内線の出発口にたどり着くとたくさんの日本人が並んでる。
日本人に人気のあるサンタの国ではなく、
なるべく日本人が少ない(というか観光客が少ない)ラップランドのイヴァロを選んだつもりだったのに
(別に日本人が嫌いじゃなく、単に驚いているだけ)。
でも、日本人に話しかけて、情報を仕入れながら、最北の地を学ぶ(無謀だ、と呆れられながら)。
大体、こんなに機内が込んでいるのに座席が取れたのが不思議。
隣の日本の方たちと機内で話しながら情報を仕入れながらイヴァロヘ。
小さな空港で案内所に一人だけいたおばさんのおかげで、イナリのホテルが取れる。
イナリは日本人の人に親切に教えていただいた場所、稲荷と覚えていた。
イナリへ行くにはイヴァロの街へ行ってバスで乗り継ぐ、ところがイヴァロの街へはタクシーしかないという。
相乗りを期待しながら、待つこと10分、結局誰も来ず、一人でイヴァロの街へ。
バスが夕方の9:30ということで、バス停の近くのホテルで時間つぶし。
あっと気がつくと、そこのレストランにはたくさんのお客さん。
ところが日本人は皆無。
これどういうこと、と驚きながらその場に一人佇む自分を楽しむ。
目の前にはラップランドディッシュ、スモークサーモンと薄くて黒っぽいハム。
それこそトナカイのハム。
頭の上の壁にはにょーっと突き出したトナカイの頭の剥製。
頭には見事な角。
やっぱ、ラップランドでしょう。
2008.02.22.