ボクたちが見るのは何も、空にできる虹だけじゃないよね。
ボクたちの周りにはいろんな虹たちがいる。
さあ、虹を探しに行こう。心を静かにして鏡のようにすれば、
きっと虹を映せる。
きっと見つかる。
そこにもきっと、
神様とわたしたちの証があるはずさ。
そこにあるのは空の高みから轟音とともに流れ落ちる滝。
その轟きとともに、
水しぶきが霧のように立ち込め、
風とともにボクらの頬をなでる。
急にお日様が射してきたかと思ったら、
突然、目の前に色鮮やかな虹が現れる。
滝の激しい動きを尻目に、
深く息を吸い込みながら、
虹はそこにじっととどまり、
ボクらを眺めている。
滝の気持ちって考えたことあるかい?
滝の気持ち?
滝に気持ちがあるなんて変だよ。
そうだね。変かもしれないね。
パパは考えるんだ。
山間を楽しそうにはしゃぎながら流れてきた水たちの気持ちを。
楽しかった流れの先が突然切れて空になっているんだ。
水たちは突然のことに気を引き締めて身構える。
これから飛び立つことを想像して身震いする。
誰だって、飛び立つってことは怖いことさ。
だって、その下はめまいが起きるほど深いんだよ。
でも、引き返すことはできない。
勇気を持ってその瞬間を待つ。
さあ、いまだ!
飛び出せ!
怖がるな
太陽を背にして
虹と共に飛び出せ。
どこからともなく聞こえてくる声とともに、
水たちはその大きな流れを空中に放り投げる。
とたんに散り散りのしぶきとなって落ちていく。
自分がどうなっているなんか、目がぐるぐる回ってわかんないかもしれないね。
でも、よく見てみると、それぞれの水のしぶきはどれもきれいな水の球になっているんだ、
動きが早くてわかんないだろうけど。
水は仲間たちと離れて一人っきりで空に飛び立つことで自分を水晶球のようなきれいな玉にするんだ。
お日様のように、お月様のように丸くなって、世界をそこに映し込むんだ。
そして、しばし虹を作る。
そして、その色はほかの水滴球に受け継がれていくんだ。
何のために?
ボクたちに虹を見せるためにさ。
水たちはそのことを知っているの?
さあ、わからないな。
2008.06.20.