103 虹を探しに.光の網

 

虹を探しに出かけよう。

空に大きな虹がかかっていなくても、きっとあるはずさ。

お日様と水と空気が出会う場所。

そこにはきっとあるはずさ、神様と私の証が。

 

ある空が澄み渡った昼間、小川の水面がきらきらと輝いている。

ふと近づいてその水面を眺めてみる。

波は光を受け、空を映し、煌きながら流れていく。

水は澄み渡り、水底の小石たちが透けてくっきりと見えている。

「パパ、変だよ。水、下から上に流れてる。」

「えっ?なんでなんで?」

「本当だ!なんでだろう?」

よく眺めてみると。

水底の小石たちの上をすべるように明るい網が上へ上へと進んでいる。

大きな石の上はどっこいしょ、穴のところでは沈み込みながら、底の形に合わせて進んでる。

よく眺めてみると、あそこでもここでも。

まるで、川の底に大きな光の網の絨毯が巻かれていっているかのよう。

「アッ!虹を見つけた!」

その光の網をよく眺めてみると、その一本一本が美しく虹色に輝いている。

その虹を携えた光の糸の網が流れとは反対に静かに水底を滑っていく。

「どうして川の流れと反対に動いていくの?」

「それはね、かぜが流れとは違う方向に吹いているからだと思うな。

風は波を起こし、波はお日様の光を受けて水底のスクリーンに光の筋を映すのさ。」

「じゃ、風がないと光の筋は出来ないの?」

「そうだね。石を投げ込んでも出来るかな。」

「風さんって、虹を作ってるんだね。風さん、そのこと知ってんのかな?」

「さあ、どうだろうね。」

虹の色ってどうしてできるかわかるかい。

それはね光がね。

自分自身を変えたってことさ。

空気の中を通ってきた光は水に出会うことで自分自身の方向を変えたんだ。

考えたことあるかい。

もし、水がなかったら、光は違った方向に向かって進んでいたんだ。

もちろん物に当たれば、光は閉ざされるけどね。

でも、光は空気という世界から水という世界に入っていったんだ。

一つの世界からもう一つの世界に入るときに自分の進む道を変えたってことさ、

それは光にとってとっても大変なことだったんだろう。

だって、考えてもごらん。

別の世界に入るときに、今まで正しいと思って進んできた道筋を変えるんだよ。

光にとってどれだけ大変だったことか。

でもね。そのご褒美として美しい虹の色が生まれるんだ。

虹が神様と人間の間の契約の証だって言うだろう。

パパはこう考える。

それって、人間は神様に出会うことで、自分自身の今までの方向性を変えることができて、

その行為の証が虹なんだってね。

考えすぎかな?

なに言ってんのか、わかんないよね。

虹ってきれいだね。

どうして虹が見えるか分かるかい

それはね

お日様があって

私がいて

その二つは繋がってる、ってことの証なんだよ。

なぜって、今はそのことは難しくって分からないかもしれないけれど。

でも、よかったらこの言葉は覚えていてほしいなあ。

 

2008.08.18.

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