105 虹の輪っか

頭の影探そう、頭の影探そう。

他の人の影じゃなくって、自分の頭の影探そう。

だって、自分の頭の影にしか虹はできないんだから。

自分の頭の影を探せば虹の場所が分かるはず。

だって、空に出る虹は<私>の影が中心

私が作るもの。

* *

「パパーっ!何ブツブツ言ってんの?」

「ほら、飛行機の中でさー、みんな変に思うよ。」

「いつも、いつも、頭の影、頭の影って、とっても変だよ。」

「おまけに、こんな空の上じゃ自分の影なんてできないし。」

仕方がない、それじゃ窓の外でも眺めていよう。

頭の影探そう、頭の影探そう。

他の人の影じゃなくって、自分の頭の影探そう。

だって、自分の頭の影にしか虹はできないんだから。

自分の頭の影を探せば虹の場所が分かるはず。

だって、空に出る虹は<私>の影が中心

私が作るもの。

だめだ、なぜか頭の中からこの言葉が離れない。

ブツブツブツ…

「パパーっ!」「ほらあそこにパパの大好きな虹の輪っかがあるよ。」

眺めると、延々とづづく雲の大平原のところに小さな丸い虹の輪っか。

見つけた。

虹を見つけた。それも小さな丸い虹。

しかもその輪っかの中心には飛行機の影、

飛行機の影が虹の冠をかぶっているかのよう。

虹の冠で自分自身を着飾りながら、飛行機の影は音もなく、雲の上をすべる様に動いて行く。

「自分の頭でなくても、飛行機でも虹ができるじゃないの。」

いやいや待てよ、そんなはずは…

頭の影探そう、頭の影探そう。

他の人の影じゃなくって、自分の頭の影探そう。

だって、自分の頭の影にしか虹はできないんだから。

自分の頭の影を探せば虹の場所が分かるはず。

だって、空に出る虹は<私>の影が中心

私が作るもの。

よくよく飛行の影を見てみると、虹の冠をかぶっている場所は飛行機の頭の方、

どうしてって考えているうちに、ふと自分が前の席に座っていたことに気がついた。

「なんだ、やっぱり同じじゃないか、自分の頭の影に虹の輪っかができているけど、

飛行機の影の中に隠れてて分からなかったんだ。

この飛行機の虹だって私がいるから出来ているんだ。

「それって、私もそうなの?」

そう、それぞれが、それぞれの虹で飛行機の影を飾っているんだ。

「ふーん、何だか難しくてわからないけど、素晴らしいかんじがするね。」

あのね、飛行機の影がずっと遠くに離れていったらどうなると思う。

飛行機の影は小さな点になって見えなくなるけど、

それでも、虹の輪っかの大きさは変わらず残ってるんだ。

「えっ?それじゃ、自分の影はなくなっちゃうの?」

そうだね、でもね、その代り、遠くでみんなの影が一つになるから、

それぞれの虹が一つになるんだ。

「それじゃ、パパが見る虹と私が見る虹が一緒になっちゃうの?」

そう、それだけじゃなくてね、他の人の虹とも一緒になるんだよ。

「へーっ、すごいね。」

 

2008.09.05.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です