109 自然の息吹

いろんな催しの疲れからでしょうか。

どうも、意識が集中せず、ボーっとしてしまします。

今回も虹の話をおやすみして、散歩をしてみたいと思います。

彼岸花は不思議な花です。

ほとんどの球根植物が春から初夏にかけて花を広げるのに、

この彼岸花は秋にその荘厳な赤い色で秋空を際立たせます。

花の派手さと相まって、毒があるというイメージもあり、なんとなく近づきがたい感じもあります。

それは、赤い花がまるで、薄いゼンマイの板がカールされたような、

赤い水引きで飾られたような、そういう動きからも来ているのでしょう。

この彼岸花の印象はいろんな花がそうであるように、花全体が一つの花のように感じますが、

よく観察するとそれがいくつかの花の集まりであることがわかってきます。

そしてその荘厳な動きがいくつかの花が集まって生まれた一つの動きだということがわかります。

そして、その流れの見事さに目を奪われることになります。

一つの花の時は中心におしべやめしべがあり

その周りを花びらがある動きをもったジェスチャで取り巻いています。

ところが、このように、いくつかの花が集まると、花びらは花全体への動きに対する力が引いていき、

その代りに中心にあったおしべがその独特の動きで花全体に流れを与えます。

彼岸花のこの荘厳で華麗な姿は、

このおしべのジェスチャーとカールした塊(花びら)から生まれていることがわかります。

このような姿を見出す時、本当に自然の中の被造物はなんと素晴らしいのだろう、と感心してしまいす。

この前のキュールさんの中高生講座の時に言われた言葉が思い起こされます。

「自然界にある生き物と機械の違うところは、

機械が周りの環境から閉じられることによって存在しているのに対し、

生き物は周りとの関わりの中で生きている。」

この言葉は、とても大切な言葉として私の心の中に刻み込まれました。

私たちが植物を眺めてとても気持ちが和むのは、

その植物を通して世界全体が感じられるからかもしれません。

世界全体が一つのものとして感じられた時、そこに神様の息吹が実感されるのではないでしょうか。

海辺の散歩はとても心地よいものです。そこには、たくさんの生きたリズムがあります。

寄せてくる波と返す波はまるで呼吸のように生き生きとリズムを作ります。

砂浜と海の狭間には濡れた砂があって、その場所は得も云えぬ色合いを生み出します。

水によって平らにされた砂の表面に薄く水の膜ができることで、鏡のように空の世界を映します。

注意してみないと、それは砂の色と勘違いしてしまいます。

よくよく眺めてみると、それは空の雲のリズミカルな模様が映っているときがあります。

そして、時として、直接見るときにはまぶしくて見えない昼の彩雲や

光環現象が水の鏡を通して美しい色合いを見せてくれます。

砂の色、空の色の動きのあるリズムは見る者を心の深いところから癒し、

私たちを深い意識にもたらせてくれます。

Wenn die Natur ihr offenbares Geheimnis zu enthullen anfangt,
der empfindet ein unwiderstehliche Sehensucht nach ihrer wurdigsten auslegerin der Kunst.
— Jochen Wolfgang von Goethe

自然がある人にその公然たる秘密を打ち明けようとしているとき、

その人は自然の最も権威のある解釈者である芸術というものへの抵抗できない憧れを感じる。

— ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

 

2008.11.07.

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