車はいよいよ6号線を、帰還困難区域のなかを抜けて
南相馬町に向けて走ります。


早速、入り口には白防護服に身を包み、
マスクをした人が何人もたっています。

この日は、曇りで、いつもの猛暑ではありませんでしたが、
暑い日にこの格好で立ち続けるのはかなり大変なことだろう、
と思います。


帰還困難区域の中にも

時々道路の端に立たれています。

道路のわきには時々モニタリングポストが立っていて、
線量を知らせています。


国道6号線という幹線道路ですから、

道路沿いにはコンビニ、

スーパー、カーショップ、レストラン、ガソリンスタンドなど、

たくさんの店が立ち並んでいます。

すべては時間が止まったかのように、

そのままの状態で、少しずつ朽ちていき、

敷地内には草が生えています。

昔、映画で見た、人類が滅亡した地球の廃墟の風景を
思い出してしまいました。

途中、<やすかわ>でおなじみの服のチェーン店に
災害対策センターの張り紙がしてありました。

そして、その先では、

なんとガソリンスタンドが営業されていていました。
たぶん、作業用の車のために

オープンしているのだと思いますが、

そこのスタンドの店員さんたちは、

なんとスタンドのユニフォームの青い作業服を着ていて、

マスクもしないで給油しています。
目を疑ってしまいました。

それから、帰還困難区域を抜けて、
南相馬町にある宿泊施設に送っていただくことになりました。

途中、たくさんのフレコンバックが積まれていました。
フレコンバックというのは、もともとコンバインなどで

収穫した米などを入れる袋で、

我が家でも稲刈りの時に使っていましたが、

トラックに一袋を乗せるのがやっとでした。
ここのフレコンバックは我が家のようなベージュ色ではなく、
真っ黒い色で、中には除染を進めるために、

削り取った表層土や草木が入っています。
さぞかし重いだろうと想像されます。

それが、いたるところに広大に積まれています。
周囲に壁を作って中が見えないようにしているところもあります。

ホテルに到着し、皆さんとお別れしました。
本当に、ありがとうございました。

ホテルは、ラブホテルを改造したもので、
震災前はラブホテルとして営業されていたようです。

昨年、帰還許可が下り、営業を始めたそうです。
帰れないときも、電気だけは送ってもらっていたそうで、
帰還時期に掃除をしたりしたそうです。

今は、災害復旧の会社関係の方、避難していて、
自宅の手入れをされる方などが泊まられるそうです。

次の日、小高駅までのタクシーを呼んでいただきました。
迎えに来てくれたタクシーの運転手さんは若い方でしたが、
タクシー会社の代表をされている方でした。

町が大変な状況で、帰ってこない人もたくさんいる中で、
タクシー会社を引き継ぐ決心をされたそうです。


タクシーを降り、小高駅から二駅先の浪江駅まで列車に乗りました。

浪江駅に着くと、なんとそこには特急列車も停まっていました。

たぶん普通列車として使われているのでしょう。

浪江駅から、もう一度帰還困難区域をバスで往復することに

しました。

そこから前日訪れた富岡駅行きの連絡バスに乗りこみ、

運転手さんの一つ後ろに座りました。

すぐ後ろの席には、パソコンが置いてあり、現在の線量と、

帰還困難区域を通過したときに受ける放射線の累積がでてました。

こういうものを置いて走っているんだ、と写真を撮りました。
バスには、運転手さんのほかに車掌さんも乗られています。

正面の上のところに、

「車内の撮影は、ほかのお客様にご配慮ください。」

と書かれていました。
「配慮するってどんなことですか?」と、聞くと
「車内の撮影はしないように、
と会社の方から言われているんですよ。」との答え、
それだったらそう書けばいいのに、と思いながら、
バスの発車を待ちました。

車掌さんがアナンスを始めました。
「車内での撮影はご遠慮ください。」
「また、パソコンの撮影もご遠慮ください。」
えっ?パソコンも? …
時すでに遅しです。

誰も、何の意味か分かっていないと思いますが…

発車して帰還困難区域に近づくと、パソコンのモニターの地図
のブロックの色が徐々に変化していきました。
外はあいにくの雨、写真を撮ることもままならず、

バスで往復しました。

往復のバスは同じバスで、運転手さんと車掌さん(若い女性の方)

も同じ方でした。たぶん、何度も往復されているのだと思いました。

それから、仙台へと向かい、仙台の街には寄らす、
直接飛行場へと向かいました。


飛行場では何事もなかったかのように、
人々がにぎやかに行きかっていました。
ちょうど、そのころに仙台では

七夕祭りが行われていた、ということを後で知りました。

2018.10.05 井手芳弘