126 ある夕暮れの雲の移り変わり

ある夕暮れ、空の雲たちが雄大に広がっている。

手前の方の薄いオレンジ色に染まった雲と、高いところの雲と空のコントラストが美しい。

よくよく眺めてみると、雲の影が空間の中に投影されている。

さまざまな現象を通して、空に色合いが生まれる。

それにしても、毎日一つとして同じ空が生まれないのは驚くべきこと。

さまざまな形態、と色彩。

それが色合いのない、水と空気そして光と闇というモノトーンの物から生まれるから本当に不思議だ。

空はもともと闇が手前の大気を通すことで青く色づいたものであるし、

赤い夕日の太陽はもともと白い太陽が手前の大気の層を通すことで赤く色づいて見えるもの。

色づいているものは闇、それとも手前の空間?

色づいているものは光、それとも手前の空間?

そして、大地、水、空気、光、というとても単純なものが

これほどまでに複雑な形態と色合いとヴァリエーションを持つことは本当に驚きに値する。

 

お日さまは大地を暖め、大地は自分に触れている水が溶け込んだ空気を暖め、

暖められた空気は高みを目指し、雲を作りながら、流れていく。

周りの空気は暖められた空気を目指して流れていく。

風が生まれ、波が立ち、木々の葉が揺れる。

雲も流れる。同じことの繰り返し、しかし、日々全く違うもの。

そうこうしているうちに反対側では、中心に不思議な輝きと存在感を持つ雲が現れる。

そのひときわ明るい輝きと形態はその雲の不思議な立体感と象徴的な存在感を高めている。

その下を生き物たちのように丸まった雲たちが移動する。

ゾウの群れのように列をなして移動していく。

その下では木々が揺れる。

草原は揺れる。風は世界を流れる。

しばらく、視線をほかのところにやっている間に、あの白かった雲が異様に暗くなっている。

その不自然なほどの大きな変化に驚かされる。このような雲は、ある場所からみると、彩雲として輝いているに違いない。

突如として、ゴアの円盤雲(井手命名)が現れた。それは、不思議なぐらい暗い色に色づきながら、群れをなして、山の端に待ちうけている。夏も高まると、ゴジラ雲(入道雲のこと)の周りにこのゴアの円盤雲が取り巻いているのがときどき見られる。

しかしそのゴアの円盤雲は太陽の方にやってくるとその様相を変え、

暗い背景ににわかに輝く円盤にかわる。

そしてよく眺めてみるとその輝きは虹色の美しい色合いに染まっている。

一羽のトビが風をつかむ。羽根を広げ、羽根の下に上昇する空を感じ、

支えられるのを感じつつ、ゆるやかに世界の中に心の動きを描く。

その動きは、はるか向こうの雲の輝きの上へと響き超えていく。

 

2009.07.17.

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