135 雲海のオイリュトミー

峠を越えて走り下りるつもりだった…

しかし、そこには舞台が広がっていた。

雲たちの舞台。

車を止め、観客席からしばらくそれを眺めることに。

日は舞台の右そでを赤く染めてファンファーレとともに退場していく。

人々はそれを合図に、観客席から帰っていく。

すべてが静まる。

そして、舞台が始まる。

広がる雲海の白い舞台の上に羽衣をまとった舞い手が静かに立ち上がる。

周りの空間を引き連れ、私の中に流れる気持ちを一緒に従えて、

早くもなく、遅くもなく、静かに、静かにその身体と手を動かしていく。

その白い羽衣で世界がかき回されているのか、世界がその羽衣をたなびかせ、動かしているのか…

いやその二つはお互いに相手を意識し対話しながら舞台を織りなしていく。

私は、身じろぎせずに、心の息を止めて、その舞台の前に立ち尽くす。

今度は別の場所から、舞い手が立ち現れる。

今度はその二人はお互いに相手と世界を通して対話しつつ、舞い始める。

目の前に、繰り広げられるのはオイリュトミーの舞台。

神々たちの舞い。

私は立ち尽くす。

自分の中から立ち現われる舞いと重なる。

舞い手たちは峠の稜線に沿ってゆっくりと舞台から私のいる観客席へと上がっていく。

あたりは、闇に染まり始める。

舞台が終わった。

どれだけの時間がたったのだろうか?

そもそも時間があったのかどうか…

大きく、深い息をすると、舞台を後に家路を目指す。

 

おまけ

舞台への途中で出会ったかわいい動物!

 

2009.11.27.

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