149 星の話・11 お日さまとお月さま

私の右手にはお日さま、お日さまは私に向かって挨拶をする。

おはよう。

私の左手にはお月さま、お月さまは私に向かって挨拶をする。

おやすみ。

「なにブツブツ言ってんの?」

月のこと、考えてんの…

月って不思議じゃない?

だって、残ってんだよ。

「何が?」

足跡…

「何の?」

月のウサギの足跡

この前の満月のときのウサギたちのお祭りの時の足跡も残っているけど、

その前のお祭りのウサギたちの足跡も残っている。

その前、その前の前の、その前の前の前の、

ウサギの足跡が一つ、ウサギの足跡が二つ、・・・

考えたら眠れなくなりそう。

ずっと、ずっと前の足跡が残っているんだよ。

もちろん、アポロのアームストロング船長の足跡もその間にあるかも…

前のことがそのままそこに刻まれていって消えることがない。

そこに記憶されていく感じ。

「それって、不思議だね。時間が経っても変わらないんだね。」

「どうしてそんなことが起こるの?」

それはね、月には空気と水がないからさ。

とくに、水がないことが大きい。

なぜって、空気がなければ風が起きないだろう?

風がなければ、足跡が吹き飛ばされることがない。

水がなければ、雨が降らないから、足跡は流れていかない。

「そっか!水があるとすべて消していくんだね。」

そう、水は高い山を削り、海に流し込む。

形あるものを溶かし去ってしまう。

でもそれだけじゃなくって。

深い谷を作ったり、広大な平野を生み出したり、形ある物も作っていく不思議なものさ。

「ずっと、残っているってどんな感じだろうね。」

「ずっと残ってほしいとおもうことたくさんあるよね。

それに、テストの時とか、覚えたことを忘れなければどんなにいいか、と思うよね。」

でもさ…、忘れたくないこともあるけど、忘れたいこともあるじゃない。

忘れたいことが、いつまでもいつまでも残っているっていやじゃない。

おまけに、前のことが全部残っていたら混乱しない?

前のことと今のことが一緒に存在してどんどん一杯になっていって、何が何だか分からなくなってくる。

 

「それって、パパの部屋みたいだね。」

「後片付けしてないものが、次から次に重なっていって訳が分んなくなっているってことだね。」

だんだん消えていけば、どれくらい前か、なんとなくわかるし、時間の感覚がつかめるよね。

「消したいときにはどうすればいいの?」

そうね、お日さまにお願いすることだね。

お日さまが射してくると、水たちが動き出す。

そして、それまであったものを消し去ってくれるんだ。

「そっか、お日さまとお月さま両方必要なんだね。」

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