150 星の話・12

お日さまとお月さまはいつも二人でワルツを踊っているって知ってる?

手をつないで一緒に踊ったり、二人離れて踊ったりね。

でもとーってもゆっくりとね。

「やっぱりね。そう来ると思った。」

お日さまは、黄道12宮の円い舞台の周りを一つの星座に一月かけ、一年で一周する。

それに対して、お月さまは一つの星座を二日半かけて、一月で一周する。

お日さまはいつも円いんだけど、お月さまは一月の間に痩せたり太ったりするんだ。

 

お月さまがだんだんお日さまのそばにやってくるとするだろう。

そうしたら、お月さまはだんだん痩せてくる。

そして、だんだんお日さまに寄り添うようになって、

お日さまのそばで、お日さまと似たような動きをし始めるんだ。

たとえば、夏のお日さまが6時ごろに出たとするだろう。

すると6時半ごろ出たりしながら、

高く上がる夏のギラギラしたお日さまのそばに寄り添いながら、

同じように高く上がり、赤く沈む時にはやはりそばに寄り添っている。

細くなりながら、まるで、自分自身を目立たせないように従順にお日さまに従っていく。

そして、必ず、一月に3日ほどは空からその姿を完全に消してしまうんだ。

人はそれを新月と呼んでいるけど、その姿を見た者はいない。

ちょうど太陽になりきって自分の意識をなくしてしまうかのようにね。

その時、お月さまはほとんどお日さまに付かず離れず動いているんだ。

 

新月から3日たって細い細い月が見え始めるとき、

それを人は新月(一日月)から数えて三日目の月という意味で三日月と呼んでいる。

夕暮れの空に薄っすらと細い弓のような線の月が見える。

人が三日月と呼んでいるものよりはるかに細い月がね。

昔の旧暦のお正月の三が日の三日目には

毎年船のような横向きの細い月が夕暮れの西の空に浮かんでいたと思うよ。

 

細い月はお日さまから離れながら、だんだん太っていく。

それと同時に、ずっとお日さまにくっついていたのに、だんだん朝寝坊になってくる。

半月になったころは、お昼の12時を過ぎてやっと起きてくる始末。

そして、満月になった時はなんと、夕方の6時ごろになって目を覚ますんだ。

その時のお月さまは、まるで別人のよう。

暗くなりかけた東の空をバックにお日さまのような円い姿で堂々と現れる。

お日さまとは、まったく正反対の動きをする。

お日さまが朝の6時ごろ出たとしたら、お月さまはお日さまが沈む、

夕方の6時ごろに出るし、お日さまが夕方6時に沈むとしたら、お月さまは朝方の6時ごろに沈む。

 

一緒に動いていないからわからないけれど、

お日さまが空を高く動く夏の日にはお月さまは冬のお日さまのように低く動き、

お日さまが低く動く冬の日には、お月さまは夏の太陽のように高く動く。

春と秋は同じように動くけれども、

それだって、よく考えると春のお日さまにたいして、秋のお日さまの動きをしているんだ。

要するに、お日さまから離れて、

お日さまのいない夜の主人公として自分自身をはっきりと出して、

お日さまの言うことには何でも反対している感じだね。

お月さまは一月かけてお日さまに近づいたり、離れたりしながら、

お日さまに寄り添ったり、お日さまに反発したりしている。

でもね、お日さまに完全になりきって自分を完全になくすこともできないし、

お日さまから完全に離れ切ることもできない。

だって、自分を完全になくそうとした途端に、

お日さまの手前に黒い影として現れてしまうし、

自分を完全に表そうとした途端に、

地球の影にすっぽりと入ってしまってその輝きをなくしてしまうんだ。

それが日食と月食さ。

「お月さまも結構大変なんだね。」

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