151 星の話・13

「パパの話って、よく自分の影の話が出てくるよね。」

「自分の影って、なんだかとっても不思議だと思う。」

「お話しの中だって、よく影の話が出てくるし、

ピーターパンの話の中でも、影を取られたりするし、

影の中から怪物が出てきたりするし。」

「影を切り取られて、離れ離れになったらどんな感じがするんだろう?」

そうだね、影って不思議だよね。

 

ピーターパンって、いつも影を置き去りにしているって知ってる?

地上を歩いているときは、お日さまが出ていると、足のところに縫い付けられている。

でも、空を飛ぶとピーターパンだけが空に飛んで行くんだ。

影は地面に取り残されて、むなしく地上を走りまわっている。

それで、ピーターパンが下りてくると、喜び勇んでその場所まで掛けていき、

着地した足に、じゃれつく犬のようにピッタリと貼りつくんだ。

ペッタリかな?

それで、喜んで、どこへ行くにもついてくる。

「それだったら、ジャンプしても離れるよね。」

そう、離れたり、くっついたり、まるで影の毬つきみたいだね。

パパは飛行機に乗るときに、影を置いてこれるからとっても面白い。

滑走路を走っているときに影が一緒に寄り添って走っているんだけど、

機体がフワッと離れると、影がアーッて手を差しのべながら、

離れていく飛行機を惜しむように走り続ける。

あきらめずに、道路の上やビルの上や公園の上を舐めるように駆けながら、

自分の周りをキラキラ輝かせながら追いかけてくる。

そして、最後にフッと消えていくんだ。

 

「それって、列車を走って追いかけている見送りの子みたい。」

でも降りてくるときは、またどこからともなくあらわれて、

お出迎えしてくれて、ずっと駆けてついてきて、最後にくっつくんだ。

「それは、なんだか、ペットみたいだね。」

「いつも、傍についてきてくれて。」

「それって、お月さまみたい!」

「だって、お月さまって自分が動いていくとついてくるじゃない?」

「ビルや山を越えながら、ずっとずっとついてくるよね。」

「でも、変だよね。」

えっつ?何が?

「だって、お月さまはとっても大きいじゃない?」

「でも、自分の影って、とっても小さいじゃない。それが同じようについてくるなんて。」

そうだよね。でもさ、満月のお月さまって自分の影と一緒に動くんだよ。

「???」

満月の日の夕方に広い野原を歩いているとするだろう。

その時に、自分の影が東の遠くの山の方に向かってどんどん長くなりながらついてくる。

そしてその影が伸びきった先の方から今度はお月さまが出てきて、代わりについてきてくれるんだ。

「???」

「えっ?」

「それって、自分の影って、お月さまと同じくらい大きいってこと?」

「それとも、お月さまって、自分の影と同じくらい小さいってこと?」

そのどっちでもあるかもしれないな。

「ああ、分んない。」

「もういいや。」

「みんな引き連れて散歩に行こう…」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です