月日の経つのは早いもの、
ドイツ研修から戻って早2か月がたってしまい、
毎年のように梅雨前のクロッタづくりに追われています。
今年は、5台まとめて作り始めたのですが、いろんなことに不具合が生じ、
1台、また1台と減っていき、3台になってしまいました。
今回注文を受けているのは2台ですのでまだ余裕はありますが、
油断はできません。
やっと塗装までこぎつけています。
つれづれの方も、相変わらずまだドイツの話題が続いています。
最初のプラハの3日間を3回シリーズで書いてしまいました。
まあ、最初の出会いの時間は長く感じるものです。
どうにか何とかザーレムにたどり着きました。
その数日前に、ザーレムのニーダーさんからメールをもらいました。
「いつ、何時に来るのか?」というメールです。
「あれ?ずいぶん前に何日ごろ着くからって
メール送ったけどなあ…」
「文章は、やや怒り気味です。」
送ったメールを調べてみると、
どうも送信されていなかったようです。
慌てて、メールを返信しました。
ニーダーさんは迎えに来るなり、
「よかった、心配したよ!」との言葉、
私の方からは連絡がないし、
フィンランド沖では船が難破するし、
で万が一それに遭遇していないかと、
工房のみんなで心配していたそうです。
工房に着いて早速次の日から研修です。
(当たり前のことです。仕事で来てますから)
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今回、新しく職人として加わったイザベラさんは
引っ越し作業ということで会うことが出来ませんでした。
昨年はニーダーさん自身も
イザベラさんの研修に時間を費やしたそうです
が、おかげで今年度は戦力として、
良い働きをされているようです。
それにもかかわらず、世界中からたくさんの注文がやってきて、
対応しきれずに、多くの注文を断っているとのことです。
すかさず、「ペロルの注文は大丈夫だよね。」と念を押します。
アジアからの注文が増えているそうです。
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毎日たくさんの問い合わせや、注文がメールで届くそうで、
「ディスカウントできないか?」という問い合わせや、
突然キャンセルしたりすることが多く、
ニーダーさんは「時代は変わった。」
「ライアを他の普通の商品と同じだと考える人が増えたのだろう。」と、
アマゾン気質といって嘆きます。
楽器の販売業者から時々問い合わせがあるようで、
いつぞやは韓国の大手の会社から連絡があり、断ったところ、
「理解できない。」とあきれられたそうです。
「ザーレムライアは
都会のインテリビジネスマンの手に渡るようなものじゃない。」
「こちらは、田舎の工房、世界の果てだからね。」
こういう時、ニーダーさんはいつも、
ここは世界の果てだから、という言葉を使います。
わたしは、ヨーロッパのドイツが
とてもインテリジェンスでモダンな国だと思っていましたが、
いつしか、韓国に遙か遠く追い越されてしまったようです。
韓国では、高層ビルの中でビジネスマンが背広とネクタイを締め、
きれいな手をして仕事しているのに対し、
ドイツ人は吊りズボンとチロルハットで作業している感じです。
(あくまでも、個人的な感想で、事実とは何ら関係はありません)
* *
今回の研修はライアの塗装です。
前回も、一応塗装をやりましたが、
今回はさらに下塗りから仕上げまで、自力作業です。
目の前には4台のライアが並んでいます。いや下がっています。
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「これ、全部ペロルに来るライアだったらやる気起こるんだけど…」
いやいや、そんな心の狭いことは言っておれません。
これまで、クロッタを同じ塗装方法で
10台以上仕上げてきた実績があります。
ここは腕の見せ所です。
一台ずつ、念入りに塗料を塗っていっては、
ライア掛けにかけていきます。
塗残しや塗りむら、特に塗料のたれは厳禁です。
塗ったライアは一晩乾かして、
次の日サンドペーパーで磨いてはまた塗る
という工程を何度も繰り返します。
ニーダー氏は時々やってきては、
フムフムという顔で出ていきます。
「ヨシ、散歩だ!」午後に声がかかります。
ニーダーさんは、
よく先代のゲルトナー氏にとてもかわいがってもらって、
いろんなところに連れて行ってもらったりした話をします。
自分の作るライアのフォルムを
ゲルトナー氏は自分のイメージする形に一番近い、
とほめてくれていたそうです。
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4台のライアは私の研修期間中に何日もかけ、
最後の仕上げ磨きを残すまでに仕上がりました。
ライアをチェックしたニーダー氏は
「そうだね、5段階評価の2だね。」との評価。
「1あげたら、調子に乗るからね。」という、
ニーダー氏の心の声が聞こえてきそうです。
ちなみに、ドイツでは1が一番いい評価だそうです。
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2019.06.07 井手芳弘