159 星の話・20

「星の話って難しいよね。考え始めるとこう、頭がグニャッてなる感じで、どっちが上でどっちが下で、どっちが動いて動かないでなんて考え始めると、頭の中が引きちぎれそうになってしまうよね。いっそのこと、考えないで好きに動かせて、泳がしといたらといたら楽だと思うよね。」

確かにね、でも、それでも星の動きって、ある意味単純なんだよ。だって、太陽を中心にして、止めて考えると、惑星は太陽を中心に規則的に動いている。ほんの僅かに楕円を描いていると言われているけど、それも計算をすれば簡単に動いている早さを出すことができる。ここまでは、ついてこれると思うよ。地球にしたって、その中の一つの惑星としてほんの少し軸が斜めになって回転しながら、楕円軌道を描きながら、他の惑星と同じように太陽の周りをまわっている。物事を自分と関係のないこととして考えるととても簡単だ、ということなのさ。あまりに簡単で、それがどうしたの?って言いたくなる感じだけどね。

地球を中心に考え始めると、物事はかなり複雑になってくる。だって動いているはずのものを止めて、止まっているものを動かすわけだからね。でも、それでも二つの動きを総合させて、これから先の動きを想定できるわけだからね。何年後にどういう現象が起きて、いつ金星が現れ、いつ火星が接近して、なんてずっと先まで考えられているんだよね。

でも、この地球がやや楕円運動をしているということと地軸が少し傾いているということを足し合わせて地球を止めてみると不思議な動きに変わるんだ。

子どもの頃のことで、事あるごとに何度も何度も思い出す事ってあるよね。それは例えば結ばれた定規だったり、するわけなんだけど、パパの頭の中に何度もよみがえることの一つに影の観察があるんだ。

小学校5年ごろ、理科の授業で<影の観察>っていうのがあってね。一日の太陽の動きによってできる影の観察をやったんだよ。厚紙に、辺が垂直に立つように工夫された帆の立体版のような三角形の紙を貼りつけて、一時間ごとに影の頂点に点を打って記録していくものだった。それで一月ごとに観察をしたときに、どうもおもわしくない結果が出た。12時にプロットしたときに、ある月は中心軸の左側になったし、あるときは右側に来たりしてね。

それで、自分の観察の仕方が正確じゃないって、思ってね。その結果を改ざんして、同じ位置に点を打って観察結果として提出したんだ。でも、そのことはずっと心の隅に残っていてね、30才を過ぎてから、初めてそれが間違いじゃなかった、自分の観察は間違っていなかった、ってことに気が付いたんだ。そして、それからは、正しいことをごまかした、という新たな印象となって残り続けることになった。

この現象こそ、じつは

地球のわずかな楕円運動+地軸の少しの傾き→地球を止める=レミニスカート(8の字のような形)

ということから起こったことだった。

このレミニスカートはメビウスの無限を表す8の字の形にも似ている。

昼の12時に同じ場所を見ていたら、一年間に太陽はこの8の字を一度描く。縦軸は太陽の高さで横軸は左右のずれになってくる。これが、観察結果をあやふやにしていた原因だったんだ。そのころは誰も教えてくれなかったし…

「なんか、言い訳している。」

実は、太陽だけじゃなくて、太陽の仲間はみんな同じようにこの動きを自分の動きの中に持っているんだ。

「それって、太陽が仲間に命を吹き込んでいるみたい。」

そうだね、それが、恒星って言われる天のドームに張り付いてる星たちと、惑星と月なんかの動いている星たちの違いかもしれない。

「やっぱり、難しい。」

「考えるのはあきらめて、惑星や太陽や月を泳がしとこっと。」

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