169 光と色の話・1
「光って目に見えないって聞いたんだけど。それって変だよね。」

そりゃ、見えないさ。

「えっ?やっぱりそっち派?」

「だよね。どう見たって!」

「光は見えてるじゃない。」

どこに?

「どこにって…、地面の上に光が当たって明るく輝いてるじゃない。」

それは地面を見てるんで、光そのものではない。

「じゃあ、雲の隙間から射してきている光があるじゃない?」

あれは、空気中のちりの粒が輝いてみえているんだ。

「そうだ、太陽はそうじゃない。」

「あれは光そのものだよね。」

いや、あれは光じゃなくて、球体状のガスの塊だと言われている太陽のガスの小さな粒が輝いていて、光そのものではない。

「なんか変!ごまかされている感じがする。」

「すごい屁理屈のような…」

それじゃ、真夜中の空に月が浮かんでいるとするじゃない。

その月はどうして輝いていると思う?

「それは、お日さまの光が当たっているからに決まっているじゃないの。」

じゃ、そのお日さまからの光って見えている?

「どういう意味?」

夜の空に沈んでいるお日さまから月に向けた光が見えているんだったら、空は真っ暗じゃなく、その光があるはずだよね。でも、空は真っ暗。

「その話って、なんだかしたような気がするな。」

どんなに光があっても、それを受け取る物がなければ光があることさえ分からなくなるんだ。

お月さまが出てれば、ああ、太陽の光が当たっているんだ、って考えることができるじゃない。

でも、月の出ていない真夜中で、真っ暗な闇夜に星が沢山輝いているとするよね。お日さまから一番遠いと思うけれども、実はその空にも太陽の光が沢山降り注いでいるんだ。

光を受ける物がなければ、そこに光があるかどうかさえ分からなくなるんだよ。

だから、お日さまが輝いているとするだろう。そしてお日さまの周りにまったくその光を受ける物がなければ、どんなにお日さまが輝いたとしても、周りは暗いままなんだ。お日さまは、自分が輝いているかさえわからなくなる。

「暗くなるってわけ?」

光自体は見ることが出来ない。

光は受け止められるものを探している。

受け止められるものがなかったらあることが分らない。

受けとめる物がなかったら、そもそもあるかどうかわからない。

「逆も言えるんじゃない?」

どんなギャグ?

「……」

「そんなことばっかり考えてんの?」

「光がなければ受け止める物があっても真っ暗で、物があるかどうかわからない。」

闇夜のカラスだね。

「闇夜のハトかも」

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