174 光と色の話・6
「梅雨明けたね。」

すごい雨、降ったよね。

梅雨が明けると、入道雲の季節になる。

エベレストヘの旅の季節だね。

「えっ?ベレスト?」

「なんか、ひねたこと考えなくちゃいけないって、思ってない?」

思ってない、ない!

だって、入道雲を見るといつも思うんだ。あの高さって1万メートルぐらいあって、エベレストより高いんだってね。おまけに上の方は氷の粒だというじゃない。エベレストの頂上だって雪におおわれているから、見かけは同じようなもの。でも、エベレストはそこまで山道を歩いていかないと近づけないのに、入道雲は目の前からそそり立っている。その迫力たるや、世界中のどこを探したって見つからないと思うよ。

おまけに、刻々と姿を変えていく。成長する世界最高の山、なんてそんなに見れるもんじゃない!

おまけのついでに、その形たるや、世界最大の巨大ねぶたショー

いろんな動物や巨人に姿を変えながら、時として雷光の灯りで内側から照らしだされる。

身長1万メートル

カッコイイ!!大迫力!

「ふーん…」「退屈しなくていいね。」

夕方なんか、あたりが暗くなり、そのそそり立つ白い雲が紅に染まり、トンボが飛び、セミの声が聞こえてくると、この場所からはお日さまが沈んでしまって見えなくなったけれど、あの赤く染まった雲の場所に行けたとしたら、どんなに真っ赤なお日様が見えていることだろうって思うんだ。そして、ヒマラヤの山々の夕暮れを思い出す。

「エベレストじゃなくて?」

エベレストは見てない。想像だけ。

あれはマナッスルだったと思う。

とにかく、8千メートル級の山を見たくて、ヒマラヤに行ったんだ。

そして、念願かなって見ることが出来た。

ところが、なんだか、現実感がなくて…

8千メートルの山って、なんだか、もっと迫力があるはずなんだが…、

こんなもんなんだー、って少々拍子抜けしたんだ。

そして、その夕方、谷間の宿に着いた。あたりはどっぷりとくれていた。

2階に案内されて、空気を入れ替えようと、窓の木の扉を開けた。

すると、闇に包まれた中に、紅に輝く三角形の山が二つそびえ立っていた。

それはそれは驚いてしまって、その場で立ちつくしてしまった。

どれだけの時間続いていたか、まったく思いだせない。

初めて、8千メートル級の山のすごさを実感した感じだった。

自分たちからはもう見えなくなっている太陽が、あそこからは真っ赤な姿で見ることができるんだろうな、って思った。

入道雲をみると、あの情景を思い出す。

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