永平寺からずいぶん時が流れました。

今頃は、寒い中でお坊さんたちは修行していることでしょう。

先日、一ヶ月ぶりにライアづくりの連続講座で再度岐阜を訪れ、

隕石居酒屋<うかい屋>さんに行ってきました。

といっても、少し前のことです。

今回は、迷うことなく、店を目指し、

外のテーブルと提灯の横を通り過ぎ、

(おっと、今回も子犬が繋がれています)

木造の家に入りました。

そこには人がたくさん座っています。

さらにのれんをくぐり、引き戸を開けると

やっぱり、お客さんでいっぱいです。

繁盛しています。

私の顔を見るなり、「いらっしゃい。」

「また来てくれましたね。」

と、顔を覚えてくれていました。

そして、「今日は本物持ってきてるよ。」と一言。

もちろん巨大隕石のことです

「え~~~~~!」

思わず、驚きとうれしさがまじった声が出てしまいました。

「今日は平日なのに?」

「博物館から、貸してほしいって依頼があって、

日にちをはっきり覚えていなかったから、もってきたんだよ。」

とのこと。

外に座っていると、風呂敷包みを持ってこられました。

「この前、京都御所であったお茶会の時に、

裏千家の方が貸してほしいということで貸したんだけど、

こんな立派な桐箱に、筆で字も書いてもどってきてね。」

と、言いながら箱を開けて取り出されました。

「持ってごらん。」と言われて、恐る恐る手にしてみました。

予想以上に、かなりずっしりと重いのに驚きです。

砲丸投げ用の砲丸を持ったことがあるので、

鉄の重さは大体わかっていますが、

明らかに鉄より重たい感じがします。

「それじゃ、これを肴にやっといて。」

と言って、店主は立ち去っていきます。

「えっ?」「い・い・ん・で・す・か?」

外のテーブルに、私と隕石と二人っきりです。

いや、隣に子犬がいました。

提灯も上に下がっていました。

遠くからは岐阜城も見てくれています。

今回は、本物の隕石を目の前にお食事です。

隕石との出会いの会です。

それにしても、このようなものが空からやってくるとは・・・

おまけに、目の前に居るとは。

まるで、有名な俳優さんを目の前にしている感じです。

現実感が遠のいていくのを抑えるために、

持ち上げてみたり、なでてみたりしていると、

ご主人がまた現れてきました。

「不思議に重い石を見つけてね、あまりに変わっているから、

盆栽用の石にしようかと取ってたんだけど、

1個目の隕石がすぐ近くで見つかって、新聞に載ってね、

これ隕石だ、って直感して博物館に電話したんだよ。」

「すると、博物館の人が、そっけない返事で、

<隕石が発見されて、これ、隕石じゃないか、

ってひっきりなしに電話がかかってくるようになってですね。>

って、言うわけさ。」

「それでも、無理に頼み込んで持っていったわけ。」

「<それで気が済むんだったら。>っていわれて。」

「それで持って行ったんだけど、最初迷惑そうな扱いされてね、

でも、石を見せたら、その職員の顔つきが変わって、

すぐに電話かけて、偉い人が飛んできて、

これは大変なことだって、東大に電話かけて、

東大から先生たちが飛んできてね。」

「大変な騒ぎになって、

この石一個でNHKのサイエンスゼロの番組ができたんだよ。」

「俺は、しばらくこの石を抱いて寝ててね。」

「46億年ほど前のものが、自分のところにやってきてくれたんだ、

ってしみじみ思って、とても愛おしくなって、

こんなものが天から自分に授けられたように感じて、

これで商売しちゃいけない、っと思ったんだ。」

なるほど、博物館へ無料で貸し出したりするわけが分かったような

気がしました。

隕石の発見から、今まで出会うことのなかった様々な人たちとの出会いが

あり、そこから考え方も変わっていかれたのではないか、と思います。

小雨も降り始め、かなり寒くもあって、

店のお客さんから中に入るようにすすめられ、

店の中に入りました。

2019/12/06 井手芳弘