「……」
「まだ、ボーッとしてるの?」
ふと思い出した。
「今度は何?」
おじいさんのこと。
「エッ?パパにもおじいさんいたの?」
「そういえば、年をとると昔のことを思い出すっていうよね。」
……
車で走っててね。
かわいそうに、道路の真ん中で猫がはねられていてね。
でも、どうすることもできずに走り抜けたんだ。
この季節になると、特に多いよね。
見るに耐えなくて、目をそむけてしまう。
「それでおじいさんのこと思いだすの?」
昔のことは、お話しの世界のようだ。
むかしむかし、あるところに一人のおじいさんがおりました。
おじいさんは山にみかん畑を持っていて、いつもそこに仕事をしに行っておりました。
おじいさんの家の前には大きな道があって、その前を車が砂煙をあげて走り抜けていた。
おじいさんはその道路の横を歩いてみかん畑に行っていました。
その道には、渡りきれなくて犠牲になった動物たちがときどき寝ていてね。
そうすると、おじいさんは、肥料の入っていた空袋を取り出し、その動物を中に入れると、それを持って、真っ直ぐした道の先から分れて橋を渡ると、そこから続く登り坂を登り、みかん畑に辿り着く。うっすらと汗をかき、大きくなったみかんの木の間に隠れるように歩くとみかんの香りが漂ってくる。
その木の根元に穴を掘るとその動物をその穴の中に埋めてあげる。
その中で入れられた動物たちは 地面のしっとりとした中で、それはそれは気持ちよさそうに眠るんだ。
時おり、みかんの根っこからお日さまのことや風のことや季節のことを聞きながら。
今でも、ずっと、ずっと眠り続けていることでしょう。
「へー!そんなお話しなんだ。」
「おじいさん、動物使いの魔法使いみたい。」
年を経るとともにだんだんそうなっていく。
「わたしのおじいさんはね。」
「小さい時、神さまかって思ってた…」