182 光と色の話・12
「発表どうだった?」

えっ?何の?

「虹の発表だよ。」

「虹を紹介するってやけに張りきってたじゃない。」

ああ、あれね…

「えっ?うまくいかなかったの?」

うまくいかなかったわけじゃないけど…

分んなくなったんだ…

「自分が?」

「それって いつものことじゃない?」

自分じゃなくって、虹が、分らなくなった。

発表の日の朝起きて、シャワー浴びてて、虹のことをどう紹介するか考えていたんだ、そしたらわからないことが出てきて、考え込んでしまったんだ。

虹って、太陽の光以外でもできるんだろうかって。

それから虹の現象が生まれる複雑な仕組の数式に太陽光以外の光線を条件としてたたき込んで、チンジャラジャラジャラってやったわけ…

「それって、パチンコじゃん」

かなり難解だったから、しばらく他のことは思考不能になってしまった。

そして、分ったんだ。太陽以外の光源では虹が出来ないってことがね。

そして、太陽の存在が分らなくなってしまった。

太陽って、忍者みたいなもんだって。

「・・・?」

だって太陽の光がボクに光を投げかけているとするじゃない。忍者が懐中電灯で光を当ててるように。

それと同時に、離れたところの人でも同じ忍者が同じ方向から光を当てているんだ。

瞬間移動しているようなもんさ。

「それだったらすごいよね。」

それだけじゃない、もう一人いれば、やはりそこへ瞬間移動しておなじ方向から光をあてている。

10人いれば10か所、100人いれば100か所、って感じで。

「じゃ、分身の術だね。」

それよりすごい。

だって、分身の術は分身した忍者が10人とか一度に見えるわけだけど、

この忍術は、一人しか見えない。どこに行っても、誰からでも一人しか見えないんだ。

後の9人は見えない。

名付けて、透明分身の術。

「それって、結局一つしか見えないってことじゃないの。」

だから、分らなくなってしまうんだ。

そして、ますます太陽の存在が分らなくなってしまう。

でも、そのことで、虹の円錐が出来上がる。

「虹って円錐なの?」

そう、自分の目を頂点とした円錐なんだ。外側の表面が赤い色で真ん中が緑色、内側は紫色でコーティングされている感じ。その円錐を輪切りにしたら虹色のバウムクーヘンが出来る感じ。

でも、その円錐は横から他の人が見ることはできない。頂点のところからしか見えない円錐。

その人スペシャル円錐。

チンジャラジャラの結果では、他の光源だと円錐はできるけれどその頂点が自分から離れてしまうから、自分から見て虹に見えなくなる。

「なんだか、分らなくなったってことが分った気がする・・・」

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