192 ヨーロッパ研修・2
今回は、ドイツでの仕事の前にギリシャでの研修を組みました。

私たちの文化の基礎になっているヨーロッパの、そのまた基礎のギリシャを体験してみたいと思ったのです。そして、その文化の名残としての遺跡を訪ねてみました。

実際にその場所に行って自分の目で確かめることの大切さを痛感した旅でした。

世界史を忘れてしまっていて、ギリシャの歴史が分らなくなっているのですが、前回のつれづれに紹介したココロスコスさんに教えてもらったミケーネを訪ねてみました。ミケーネの遺跡は紀元前1500年ごろに栄えたアガメムノン大王の黄金の仮面でも有名なところで、シュリーマンによって発見されました。

最初に、ミツバチの巣のようなドーム状の室内を持つ古墳のようなものを訪れ、その後いよいよ、ライオンの門を通って神殿跡に向かいました。100mほどの高さにある丘まで少しずつ登っていくと、少しずつ、少しずつ眼前の景色が広がっていき、展望が開けるとともに、意識も広がっていくような感じがします。そして丘の上に立った時に、その場所からすべてを望むことが出来ました。平野のはるか向こう側に阿蘇山の涅槃像のように広がる山。ガイドの方によると、昔の人はこの山をアガメムノンが寝ていると考えていたようです。

その山を前方に眺めながら、左後方と右後方にそびえる2体の山。両方の肩に沿うように空に力が昇っていくような感じです。そして背後にはやや離れてもう一つの山。そこから峰を降りて背中の方に力がやってきます。その力は先ほどの二つの山の間を通りこちらにやってきます。まるで、二つの山は二頭のライオンのように門となってそびえています。

しかし、この丘は左右を谷で挟まれていて独立していてこの力は左右に分かれながら分散されて前方に向かいます。ここに立っていると、高い襟のマントを着たような感じで、覆われている感じがします。そして、その力を集めて平野にみなぎらせ、その向こうの対象の山と出会う感じです。

私自身、パワースポットなどのパワーは感じない鈍感な人間ですが、これまで学んできた遠近法と水平線や垂直線に関して、フォルメンなどの形に対する体験、オイリュトミーの間隔、植物の観察や流れの観察から培った動きに対する感覚、また、日本で様々な場所を訪ねた時の体験がミックスされて、このようなことに気が付いたような気がします。遠野の里の、はるか遠くを取り包んで一つの世界を生み出している感覚、遠野、那智、英彦山など修験場に共通する三体の山の存在、などなど、日本の古代の聖地との類似性をとても感じました。そして、どうして山の漢字が三つの山からできているか、ということもわかったような気がしました。たくさんの人たちと一緒のツアーでしたが、丘の上にしばらく立って観察している間に、わずかばかり一人だけの静かな時間を持つことが出来ました。

この感覚を持って、次の日、神託の場所であるデルフィ—を訪れました。

1000m以上の高さにあるデルフィ—は双方をより高くて険しい岩山の崖に取り巻かれた場所で、より意識が岩山にこだまして集まるような場所です。その崖を眺めているだけでも、鳥肌が立ってくるような迫力です。その右側にはとても神聖さを感じさせる渓谷がありそこから渓流が注ぎ込んできます。ガイドブックを見てみると、神託をくだす巫女たちはそこにある泉で体を清めた後、神託を下ろすアポロ宮殿に向かったとのことでした。やはり身を清める場所が存在していたのです。その場所は、神社にある、神官たちが自分たちを祓って清める場所と同じような場所、意味を持っていたようです。その岩山の遥か背後には雪をいただく高い山が聳えていました。

眼前には深くて広い谷がはるか遠くまで広がっていました。

パルテノン宮殿でも同じような体験をすることになるのですが、パルテノンでは更にキリスト教徒の関わりが鮮明になってきました。

このことに関しては、次回書きたいと思います。

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