とんでも八分!ファット8ップン、私は発奮
ゲートを閉めたと告げられて…
「すべては終わった。さあ、日本だ!」という感慨を含んだ気持ちから、いきなり奈落の底に落とされた感じです。
ソフトクリームを食べながら長椅子に横たわっている状態から、いきなり3千メートル競走のスタートを切らされたような感じのような…
「あっ、予定していた教室が間に合わない。みんなに迷惑をかけてしまう。どうしよう。」
頭の中をいろんなことがぐるぐる回りながら、あり得ない自分の状況を受け入れるのに、少々時間がかかりました。
それでも、気持ちを切り替えるしかありません。
そして、突然訪れた現状を打開していくしかありません。
といっても、私にできることは、ただ、黙ってカウンターの前で職員の人たちの手続きを見守ることでした。
しばらくすると、
「本来はできませんが、ロンドン−成田間の次の日のチケットに変更しました。」
「変更手数料として、140ユーロいただきます。」
パリ−ロンドン間は後の便で行ってもらいますが、ちょうどイースター休みの終わりと重なって満席なので、キャンセル待ちになりますから、この時間にカウンターにまた来てください。」
何とかなりそうだ、いろいろ大変だが、この際仕方がない。これですべては解決する。
安堵感とともに、教室の方にキャンセルの連絡を入れ、しょげていても仕方がない、と気持ちを切り替えて、2時間ほどの待ち時間をそばの椅子で、空き時間に仕事するぞ、と気合を入れて待つことにしました。
言われた時間に行くと、「残念ながら座席の空きはありませんでした。次の便を待ってください。」次の待ち時間を告げられ、また仕事しながら数時間待ちました。
そして、カウンターに行くと、「満席です。」
このやり取りを、昼の12時ぐらいから夜の8時頃まで延々繰り返した揚句、カウンターで、「残念ながら、飛行機は空いていませんでした、明日の朝の便も空いていないでしょう。」
「ここからロンドンまでの便がないので、あなたは明日のロンドン—成田便にも乗れません。」
…?!
来た来た来た!
やっぱりこれか、
一難去って、また一難!
絶体絶命!
でも、モードが切り替わっているので、それほどの驚きもなく、
さあ、これからどうなっていくんだろう、という何か、他人事のような、ドラマでも見ているようなワクワク感さえ生まれています(たぶん、やけになっていたのでしょう)。
「それで…」
「唯一の方法は、ユーロスターを使うことです。」
???
「ユーロスターを使えば、数時間でロンドンに着くので、始発の便で行けば間に合います。」
今度はユーロスター!
地面に穴があいて、空から光が差しかけてきたような感じでした。
気持ちを切り替えながら、新たにかかるお金の心配もしつつ、空港の駅のカウンターでユーロスターのチケットとユーロスターが出発する駅までの切符を買い、空港の待合室で一晩過ごすことにしました。
機関銃を持った兵士たちがときどき見周りに来ます。
チケットを見せろと言われて、見せると
「おまえは、ここから飛行機を利用しないのなら、ここの待合室を使うことはできない。」
航空会社の職員に、出来ると言われたのだが… と説明しても、聞き入れてもらえず、
「夜間カウンターの職員のところに行きなさい。きちんと説明してくれるだろう。」
次はこれか!
カウンターで一生懸命説明すると…
「OK」と言われ安どしてイスに戻り、辺りに不安を感じながら朝を迎えました。
朝早く、複雑で巨大でさっぱりわからないノルド駅に着き、何とかユーロスターの乗り場を見つけ、何とか(何とかのなんと多いことか)乗り込むことが出来ました。
憧れのユーロスター!! こんなところで乗れるなんて!! ドーバー海峡の下をくぐるなんて!!
嬉しさに、ウキウキです。
列車は、朝もやが低く垂れこめる平原の中を疾走していきました。
そこに射しこんでくる太陽の光が、今まで見たこともないような不思議な色合いを作り出しています。
やっと終わった。
いろんな思いが走馬灯のように頭の中を駆け巡っていきました。
PS この後は、嘘のようにすべてがスムーズに進んでいきました。