そよぐね、さわさわだね、銀のしぶきが飛び散るようだね。
「ススキ持って何してるの?」
お祭り…
だって、今日は名月だしね。
「なにそれ?中秋の名月は先月だったし。
おまけに今日は満月じゃないし。」
だって今日は栗名月、13夜の祭りなんだ。
満月になる前にお祭りするのさ。
「満月が断然綺麗なのに、
どうして、よりによってその前にお祭りするの?」
それは誰にもわからない。
昔からそうお祝いされてきたんだ。
でも、ボクはうおのせいじゃないかなって思っている。
「うお!?」
「魚は栗食べないって思うけど?」
そうではなくって星座のうお座のことさ。
そう、あれは今から20年ほど前の中秋の名月の夜だった。
松林の中を散歩していた時のこと。
道を月の光と木の影が交差してとてもきれいだった。
歩きながら考えていた。
どうして、今の月が名月として祝われるんだろうって…
だって、美しさからいったら、
冬至のころの高く上がったお月さまがくっきりきれいなはずだ。
どうして秋?春でもなくて…
立ち止まって、ふと思った。背後の星座は何だろうかって?
いろいろ計算して、いきあたった答えはうお座だった。
うお座と言えば、復活祭の背後の星座がうお座なんだよね。
あっ!と思った。
<そうか、うお座に来た満月を月の復活としてお祝いするんだ。>
って思った。
次の日、幼稚園の子どもたちが、
お団子コネコネしていて、
これってイースターの白い卵の親戚じゃないかって。
それから、しばらくはミヒャエルの剣は月じゃないか、
とか熱にうなされたかのように、考え続けていた。
「その話、聞いたことがあるような気がするな〜」
「でも、どうして、そのことと栗名月と関係あるの?」
それがさ、頭の中で、黄道12宮と太陽、
月の位置をシミュレーションしてみると、
栗名月の背後にうお座がやってくるんだ。
中秋の名月頃には、おとめ座辺りに太陽があって、
真反対の位置にいる月はうお座辺りなんだけど、
次の月には太陽が星座を一つ進み、
てんびん座にやってくる。すると、
その真反対はうお座を通り越しておひつじ座になる。
うお座にやってくる月はというと、2日前の13夜の月なんだ。
うお座っていうのは本当は天空を一番大きく動く星座で、
他の星座の軌跡が空で曲線になるのに対して、
うお座は直線で動く…
「途中の説明はさっぱり分からなくて、いやになるけど…」
「うお座が復活の星座でそこに来た
お月様が水を得た魚のようになるって想像できるのは素敵!」