205 栗名月

そよぐね、さわさわだね、銀のしぶきが飛び散るようだね。

「ススキ持って何してるの?」

お祭り…

だって、今日は名月だしね。

「なにそれ?中秋の名月は先月だったし。

おまけに今日は満月じゃないし。」

だって今日は栗名月、13夜の祭りなんだ。

満月になる前にお祭りするのさ。

「満月が断然綺麗なのに、

どうして、よりによってその前にお祭りするの?」

それは誰にもわからない。

昔からそうお祝いされてきたんだ。

でも、ボクはうおのせいじゃないかなって思っている。

「うお!?」

「魚は栗食べないって思うけど?」

そうではなくって星座のうお座のことさ。

そう、あれは今から20年ほど前の中秋の名月の夜だった。

松林の中を散歩していた時のこと。

道を月の光と木の影が交差してとてもきれいだった。

歩きながら考えていた。

どうして、今の月が名月として祝われるんだろうって…

だって、美しさからいったら、

冬至のころの高く上がったお月さまがくっきりきれいなはずだ。

どうして秋?春でもなくて…

立ち止まって、ふと思った。背後の星座は何だろうかって?

いろいろ計算して、いきあたった答えはうお座だった。

うお座と言えば、復活祭の背後の星座がうお座なんだよね。

あっ!と思った。

<そうか、うお座に来た満月を月の復活としてお祝いするんだ。>

って思った。

次の日、幼稚園の子どもたちが、

お団子コネコネしていて、

これってイースターの白い卵の親戚じゃないかって。

それから、しばらくはミヒャエルの剣は月じゃないか、

とか熱にうなされたかのように、考え続けていた。

「その話、聞いたことがあるような気がするな〜」

「でも、どうして、そのことと栗名月と関係あるの?」

それがさ、頭の中で、黄道12宮と太陽、

月の位置をシミュレーションしてみると、

栗名月の背後にうお座がやってくるんだ。

中秋の名月頃には、おとめ座辺りに太陽があって、

真反対の位置にいる月はうお座辺りなんだけど、

次の月には太陽が星座を一つ進み、

てんびん座にやってくる。すると、

その真反対はうお座を通り越しておひつじ座になる。

うお座にやってくる月はというと、2日前の13夜の月なんだ。

うお座っていうのは本当は天空を一番大きく動く星座で、

他の星座の軌跡が空で曲線になるのに対して、

うお座は直線で動く…

「途中の説明はさっぱり分からなくて、いやになるけど…」

「うお座が復活の星座でそこに来た

お月様が水を得た魚のようになるって想像できるのは素敵!」

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