206 光と色の話25

秋は色づきの季節

イチョウは黄色、モミジは真っ赤、

ハゼの木朱色、カシワは茶色、

バナナは黄色にリンゴは真っ赤、

みかんはオレンジ、イチゴは真っ赤。

「バナナとイチゴは秋と関係なくない?」

だっけー?
秋になるといろんなものが色づくよね。
それって、鉄が熱いのに似てる気がするんだよね。

「鉄の葉っぱ?」

ちがうちがう。
鍛冶屋さんとか鉄を叩くときに熱くするじゃない?
昼間に熱い鉄を見たときには普通の鉄の色なんだけど、

辺りが暗いとボーッと赤く輝くんだ。

太陽の力が強い夏は、葉っぱは光や熱を受け止めているけど、

秋になると葉っぱより、周りの方が暗く寒くなるから、

葉っぱの方から、光や熱が周りに出ていく感じ。
そういえば、提灯もそんな感じだよね。

昼間ついているかどうかわからないけど、夕方になると、ボーッと輝き出す。

「昔、昼あんどん。今、昼間の蛍光灯って感じ?」

でも、不思議だよね。
色づくものはすべて、赤やオレンジや黄色の暖色系だよね。
すべて、暖かい感じがする。

でも不思議なことに、お日さまの光が強いから

輝きの色が鮮やかだとは限らない。

どんより曇った日にモミジの紅い色が

周りにしみ込むように輝いていることがある。

おまけに、同じ葉っぱでもそれを見る場所によって、輝きが違ってくる。

「それって、同じモミジの木を見てても、人によって輝きが違うってこと?」

そうそう、同じものが、まったく違うものに見えるんだ。

「そんな話、どこかで聞いたような…」

で、いろいろ観察していて気が付いたんだけど、

こちらから見て、葉っぱの反対側から

光が当たっていているときが輝くんだけど、

その背後が明るいと輝かないんだ。

だから、背後が明るい空だと輝かない。

背後が山や家や特に暗がりだったりしたら最高。
天使の梯子の中のように、

その木にだけ光が当たって、

背後が暗い空だったりしてもすごい。

ドラマチックな輝き。
だから、お日さまが射してなくても、

背後が暗がりになるととたんに輝き出す。
暗がりの前に輝く朱色の何と心にしみわたることか。
沁み渡ってきてボーッとしてくる。

「いつもの感じね。」

人の心の中も同じ感じかな、って思う。
心の中の手前に見えない光を受けている

雲みたいなものがあって、その背後に深い深い闇があってね。

その闇を背にしてその雲みたいなものが

得も言われぬピンク色に輝いているんだ。

「どうしてピンク色なの?」

わかんない、なんとなく。
目に見えないお日さまの光が差し込んで

色として暗い背景に輝き出す。
寒さで鮮やかに色づくモミジも、
甘い、甘い柿の朱色も。
甘さが輝きだしている…

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