211 年賀状の不思議・2

「ところで、もう一つの年賀状ってどんなのだったの?」

「ボツになった写真。」

ああ、あれね。

それはこの写真。

凄くない?

「これは、何の写真なの?」

石が積み重なっているような。

高い石の塀があるような?

どこかの遺跡?

「謎かけの写真を選んでた、

っていうからには、この写真にも謎があるはずだよね。でもなさそうだけど…」

これは、円形劇場の写真。

ギリシャにあった劇場で、かなり大きいものだった。

「???」

「円形劇場はどこに?」

円形劇場の周りの円い客席の写真。

「えっ?円形劇場って、真っ直ぐで、立ちあがっているの?」

いやいや、円形している

これは、円形劇場の中心から撮った写真。

ガイドの人が、「劇場の中心に立って音を出すと、

とても音が増幅されるように聞こえるからやってみませんか?」

って言ったんで、やってみようとして、

真ん中に立ってみたら、

周りがこんなに見えたわけ。

細い石積みのように見えるのは通路で、

幅が広く石段も大きいのは客席。

みんな、立ち上がる。

「えっ?分らない!」

「みんな広がっているんでしょ?」

「どうしてそれが、真っ直ぐになるの?」

だよね。だよね。不思議だよね。すごくない?

「まだすごさが分らない…。」

他の場所にいる人には見ることが出来ない。

主人公として円形劇場の円い舞台の真中に立った時、

すべての道は守り神のようにまっすぐ立ちあがる。

そして、その人から発せられた声は広がり、

聞こえなくなるけれど、観客席で跳ね返されて、

立っているその人のところに再び集まってくる。

自分が発した声はいろんな物を通って薄められていくけれど、

再びその人のところに集まる。

すべての道が私の足元から始まる場合。

その道はすべて私に対して垂直に立ちあがるものに変わる。

しかし、本当に真っ直ぐ立つのは、自分が向かおうとする一本の道だけだ。

円形劇場は主人公が特別の体験をする場でもあった。

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