213 梅の花と桜の花

「梅の花がきれいだね〜!」

そうだね、たくさん咲いてるね。
ミツバチも飛び回っている。
パパはこのミツバチの音が大好きなんだ。
とても懐かしい感じがする。
日向ぼっこしていた時には

いつもそばにいて、取り巻いてくれていた。
不思議だよね。

「何が?」

いろんな花があることがさ。

「あたりまえのことじゃん」

そうだよね。当り前だよね。でも不思議なんだよね。
ところで、今咲いている花、梅の花だってどうしてわかる?

「えっ?梅だから、梅なんじゃない。」

じゃ、どうして桜じゃないって言いえる?

「そりゃ…」

「梅林に咲いているから!」

一本だけで咲いていたら?

「そうね、春の早い今の時期に咲くから。」

確かにね、でも、もうサクランボの実をつける桜は咲いているよ。

「梅の方が、なんだか質素な感じ、桜は華やかな感じだし。」

「花びらも、桜はハートの形の花びらで、切れ込みがあるけど、梅はない。」

そうだよね、でもなぜ、桜は華やかで、梅は質素な感じがすると思う?

「そんなの、感じなんだから、具体的に表現できない。」

梅の花と桜の花の決定的な違いは、

梅の花は一つのつぼみから一つだけ花が咲くけど、

桜は、一つのつぼみから3〜5個のつぼみが出てきて

その柄が伸びて花を開かせる。

「へーっ!二段式ロケットみたいだね。」

梅の花は柄を延ばさないから、

木にぴったりくっついている感じ、

おまけに花も少ない感じになる。

花びらも、桜の花よりやや厚く、形も楕円形で

切れ目がなく単純で少し内側に向かってへこんでいる。

まだ寒さの残る空気の中で、

そのつぼみを開かせるけど、

外の世界にすべてを捧げると言うよりは、

まだ少し内側に保つものがある。

桜の花は、温かくなった空気の中に自分自身を溶かしていく感じがある。

「そうなんだ、桜が華やかな感じがしていたのは、

花がたくさんついていたからなんだ。」

「そういえば、サクランボの実には柄が付いているし、

2個がVの字みたいにくっついているよね。」

* * *

いろんな花たちが、天に向かって花開いていく。
それぞれの開き方で。
ただ立ち止まり、そのあり様を眺める。
これほどまでに沢山の開き方があるのか
と驚くばかり。
私の中にもたくさんのつぼみ、
たくさんの花たちに囲まれて、
優しいお日さまの日差しが
空気を暖める中、
私の中の花が開く。

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